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内燃エンジン搭載モデルとBEVモデルを同時にラインナップした新型5シリーズ。だが、エンジンとモーターというパワーユニットのほかにも、バッテリーやそれに伴う重量配分など、その違いは多岐にわたる。そうした条件の下で、変わらぬBMWの「駆けぬける歓び」を結実したi5のメカニズムの数々を紐解いていきたい。

2024/10/3

※このページは三栄社発行の『モーターファン別冊 ニューモデル速報 Vol.89 BMW電気自動車のすべて』より一部改変の上、転載したものです。
TEXT◉安藤 眞(Ando Makoto) PHOTO◉平野 陽(Hirano Akio)/佐藤亮太(Sato Ryota)/BMW

BMW i5のメカニズムについて

今回、BMW i5のメカニズムについて、BMWのブランドマネージメントについてはプロダクト・マネジャーの御舘康成から、テクニカル面については西村篤司から解説いたします。

(左)BMWブランド・マネジメント・ディビジョン | プロダクト・マネジメント | プロダクト・マネジャー | 御館康成 (右)カスタマーサポート・ディビジョン | リテール・トレーニング | テクニカル・トレーニング | マネジャー | 西村篤司

PACKAGING

パッケージング

大きくなったゆとりを活かしバッテリー搭載のネガは皆無

「商品開発に当たっては、“駆けぬける歓びがあるドライビングマシン=BMWらしい商品でなくてはならない”が絶対条件でした」

これは今回の取材で伺った話ではなく、10年前に刊行された本誌シリーズ“BMWi3のすべて”からの引用。EVになってもBMWらしさは失わないという哲学は、現在のiシリーズにも通底している。大きく異なるのは、クルマの仕立てだ。i3がパッケージングからボディまで専用設計だったのに対し、その後のiシリーズは内燃エンジン(ICE)車とほとんどのコンポーネントを共用している。しばらくはパワートレインもマルチパスウェイが続きそうな現状では、基本構造はICE車と共用した方が、低コスト化できるからだ。

日本向け5シリーズのICE仕様は2023年7月に発表されており、すでに所有されている方もいるかと思う。BEVのi5も外寸法は共通だが、まずそのあたりを従来型5シリーズ(G30)と比較してみよう。全長は4945㎜から115mm伸びて5060mmとなった。一方でホイールベースは2995mmと、従来型からの伸長量は20mm。となると、その差の95mmは前後オーバーハングということになる。ショートオーバーハングにこだわってきたBMWが、なぜ?かといえば、前面衝突時のバッテリー保護性能を高めるためだという。

フロントバンパーキャリアが二階建てになっており、上はフロントサイドメンバー、下はフロントサスのサブフレームを使って衝突エネルギーを分散する。二階建てのメンバーはどちらもアルミ合金製としてヨー慣性モーメントの低減を行なっている。

全幅は1870mmから1900mmへと拡大。理由は明らかにされていないが、側面衝突時のバッテリー保護性能には確実にメリットがあるだろう。全高は1480mmから1515mm(M60は1505mm)と35mmの増大。これは床下へのバッテリー搭載を前提にしているからだ。バッテリーはキャビンの床下にほぼ隙間なく搭載。ICE用のフロアトンネルや燃料タンクスペースも利用して、巧みにレイアウトしている。

バッテリーは600㎏弱あるため、前後重量配分はおのずと50:50に近くなる。後輪駆動のeDrive40は47:53と、むしろややリヤ寄りだ。フロントにもモーターを搭載するM60が50:50となる。

i5 eDrive40 全高は1515 ㎜(M60は1505 ㎜)と、セダンとしては高めだが、長さも幅もあるので、プロポーションのバランスは良い。キドニーグリルの輪郭はICE車と共通で、めっきの加飾がない代わりに、外周をLED導光棒で光らせる。フロントフェンダーやサイドドアは成形の難しいアルミ合金だが、複雑な面をきれいに出している。

では実車を見てみよう。運転席のサイドシル高は筆者の実測値(以下同じ)で約420mm、幅は190mmと、このクラスとしては標準的。シル上面と床までの段差は70mmと小さめで、乗り込む際に左足を入れると、少し床が高いことに気付くが、すぐに慣れてしまうレベルだ。

身長181cmの筆者が着座してポジションを合わせると、シートスライドは最後端から135mmと、全260mmのほぼ中央。ステアリング基準でスライド位置を合わせても足首が窮屈にならないのは、エンジン縦置きプラットフォームがベースで前輪の位置が前にあることに加え、ステアリングのテレスコピック調整量が80mmと大きいからだろう。床からシート前端までの段差は235mmあり、運転姿勢は自然。乗り込む際に感じた床の高さは、シートに座ってしまえば感じなくなる。

調整幅60mmのハイトアジャスターを10mmほど上げて、頭上の余裕は約100mm。ボンネットの視認性は良く、左端も5分の4程度まで見える。ドアミラーは三角パッチ付けなので、左Aピラーとの基部にやや大きめの死角ができるが、ピラー位置が手前でウインドシールドも大きいため、左折時に見たい場所はウインドシールド越しに見える。

斜め後方の視界もリーズナブル。ハイデッキスタイルなので、後方はあまり見えないが、そこはアラウンドビューカメラが補ってくれる。後席に移動してみよう。シル高は435mm、幅は200mmと、乗降性を阻害するほど高くはなく、前席で感じた床の高さも感じない。足抜けスペースが350㎜と大きく、大きな革靴でも楽に通せる。着座して感心したのは、バッテリーの存在感のなさ。床面からシートクッション前端までの段差は330mmあり、ヒザがもち上げられる感じはないし、足も前席下に甲までスッポリ入る。シートサイズも大きく、着座感は良好。座面のクッションストロークも十分にある。

トランクスペースもEセグメントセダンらしく広大。後ろ半分にはアンダーボックスもあり、EV化によるラゲッジ容積へのしわ寄せは見られない。スペアタイヤは搭載されず、パンク修理剤での対応になるが、タイヤ空気圧モニターが標準装備されたため、刺さり物に起因する空気圧低下には、すぐに気付くはずである。

BODY

ボディ

バッテリー搭載に最適化した構造と積極的な空力利用

プラットフォームの大部分は、i5もICE車も基本的に共通。大きな違いは、キャビン下のフロアサイドメンバーの構造だ。ICE仕様はフロントサイドメンバーからフロアサイドメンバーまで連続するオーソドックスな構造だが、i5はバッテリーの搭載スペースを確保するため、フロアサイドメンバーを撤去。代わりにサイドシル下に、アルミ押し出し材のサイドメンバーをボルト締結している。これはバッテリーケースの支持構造としても機能するものだ。

ボディは鋼板とアルミニウムの複合構造。フロントまわりはサスタワーがアルミダイキャストの一体成形になるほか、フロントサイドメンバーにも、アルミの押し出し材が使用されている。またフロントサスタワーの前後には、アルミ合金製の補強ブレースが筋交い状にボルト締結されている。

リヤまわりも、サイドストラクチャーからサスタワーにかけての大きな部品がアルミダイキャストで一体成形されている。近年はフロアまで一体でつくる“ギガキャスト”が話題となっているが、あれだけ大きな三次元形状の薄物を一体鋳造すると、歪み対策が問題になるはず。歪みを抑える目的で肉厚を確保しなければならない部位もあるため、必ずしも軽くできるとは限らない。

ボディに使用されている鋼板グレードの詳細は公表されていないが、超高張力鋼板と多相鋼を使い分けているとのこと。一般的に超高張力鋼板というと、780~980MPa以上を指すことが多い。Bピラーは絞りの深さを考えると、ホットスタンプ材が使われていると思われる。“多相鋼”とは、粘りのあるフェライト相に高強度なマルテンサイト相を分散させた鋼板で、一般的には引張強さは590~980MPa程度になる。

興味深いのは、キャビンフロアの鋼板グレード構成。一般に側突荷重を支えるには、フロアクロスメンバーに高強度材を使用して対応するが、この部分に超高張力鋼板や多相鋼は使用されておらず、フロアパネルに多相鋼を使用しているという。

フロアの平面部は薄肉化するとNV性能が悪化するため、高強度材を使っても薄肉化できず、軽量化効果は得られない。だから高強度鋼板は使用しないのが一般的なのだが、i5は高強度鋼板を薄肉化せずに使用して、フロア全体の強度を高め、キャビンおよびバッテリーの保護性能を確保しているのではないか。

外板類にもアルミ合金は多用されており、いわゆる“開きもの”は、すべてアルミ合金製(サイドドアビームを除く)。加えてフロントフェンダーもアボディルミ合金だから、「ボルトで留まっている外板は、前後バンパー以外アルミ」と考えて良い。重心点から遠い外皮のアルミ化は、慣性モーメント低減の効果が大きい。

BMW i5

キドニーグリルは基本的に塞がれている。よく見るとグリル下部にシャッターが設けられていて、状況に応じて開閉することで温度管理を行なっている。

外観で気付いた点は、まずフロントグリルシャッター。ブランドアイデンティティであるキドニーグリルに穴は開いておらず、冷却風の取り込みはバンパーグリルからになるのだが、ここに電子制御式のシャッターが付いている。熱負荷の低い走行領域ではこれを閉じ、グリル内への走行風の流入を抑えて、空気抵抗の低減を図る。

バンパーグリル両サイドにあるスリットは、前輪横に空気を導き、側面を整流するエアカーテンの取り込み口。下を覗くと、前輪の前には船底形状の三次元ディフレクターが見える。床下はリヤ駆動系まわりを除いて空力カバーで覆われており、キャビン下はバッテリーケースがあるため完全にフラット。リヤバンパーはレーシングカーさながらのディフューザー形状になっているなど、目立たないところで空力対策を行なっている。

POWER TRAIN

パワートレイン

出力の最適化を図るためのバッテリーマネジメント

eDrive40グレードのリヤモーターの最大出力は250kW、最大トルクは400Nm。M60はフロントモーターが192kW /365Nm、リヤモーターが250kW /430Nmというスペックだ。モーター出力はバッテリー出力に左右されるため、AWDの最高出力は前後モーターの合算にならないケースもあるが、M60は合算した出力がシステム出力となっている。

電気モーターはBMW内製。ローター側も電磁石とした“巻線界磁式同期モーター”を採用する。永久磁石を使用しないため、ネオジムやジスプロシウム、テルビウムなどのレアアースを使用する必要がなく、調達リスクを負わずに済む。また、高回転域では、永久磁石式では避けられない逆起電力が大きくならないよう制御できるため、高回転域での効率低下が抑えられ、高速走行時でも永久磁石式ほど電費が低下しないというメリットがある。

反面、ローターに電力を送るブラシ(接点)が必要になるが、車両寿命を考慮した設計になっており、メンテナンスは不要である。

BMW i5

フロントモーターはミッドシップ配置:M60のボンネットフードを開けると、フロントモーターはフロントアクスルより後方に収まっていた。重量物を重心に近づけ、ヨー慣性モーメントを少しでも小さくしようという狙いがわかる。フロントモーターとフロントバンパーの間は広く空いており、衝突エネルギーの吸収に使える空間は大きい。

走行用バッテリーはリチウムイオン式で、セルのサプライヤーは韓国のサムスン。3並列×4直列に接続したシングルセルモジュールを3個、3並列×12直列を2列並べたダブルセルモジュールを4個搭載しており、総セル数324個から、399Vの定格電圧と83.9kWhの総電力量を得ている。WLTCモードの電費は、eDrive40が166Wh/㎞、M60が205Wh/㎞。ICE車で馴染みのある表記に直すと、前者が6.0㎞/kWh、後者が4.9㎞ /kWhとなる。満充電当たりの航続距離は前者が580㎞、後者が455㎞だ。

83.9kWhという総電力量をどう見るかだが、筆者は「現実解」だと思う。宿泊施設にある充電設備は、ほとんどが出力6kWの普通充電器だから、12時間つないで充電できる上限は72kWh。15%の余裕を残して宿に到着すれば、翌日は満充電で出発できる。逆に、これ以上の容量があっても、12時間で充電できる量は変わらない。

バッテリーモジュールはBMS(バッテリーマネージメントシステム)やジャンクションボードとともに鋼板製ケースに格納されている。ケースは密封されているが、温度や気圧による内圧変化に対応するため、防水透湿性メンブレンを使用した通気口を4ヵ所設けている。

バッテリーは水冷式で、空調システムとは熱交換器を介して間接的につながっており、必要に応じて空調システムの加温/冷却機能を利用することが可能だ。

また、電気駆動系と充電器の冷却水回路とは切替バルブによって独立した回路を構成することができ、例えば外気温の低い屋外駐車を長時間した際のスタート時には専用の温水器も使用してバッテリーを適温まで加熱し、最大の電気出力を得ることができる。充電時にもバッテリー温度が極端に低い場合には適温まで加熱することで効率的な充電が可能。バッテリーの温度が常に理想的な範囲に収まるようマネジメントされている。

バッテリーはセルごとに温度と充電状態がセンシングされており、ひとつのセルでも異常な温度上昇が見られると、出力を落とすとともに警告灯を点灯。各セル間はヒートシールドによって断熱されており、隣接するセルに温度が伝わらないようになっている。

BMW i5

フラットに敷き詰めたバッテリー :走行用のバッテリーは、キャビンの床下一面に搭載されている。十分な電力量を確保するため、フロアトンネルはもとより、ICE車なら燃料タンクを搭載する後席下も無駄なく使用している。透視図はM60のもので、走行用モーターは前後に横置き搭載されている。

メカニズム詳密解説 MECHANISM

i5 eDrive40i5 M60 xDrive

フロントモーター最高出力

-

192kW[261㎰]

フロントモーター最大トルク

-

365Nm[37.2㎏m]

リヤモーター最高出力

250kW[340㎰]

250kW[340㎰]

リヤモーター最大トルク

400Nm[40.8㎏m]

430Nm[43.8㎏m]

システム・トータル最高出力

-

442kW[601㎰]

システム・トータル最大トルク

-

795Nm[81.1㎏m]

バッテリー容量

83.9kWh

83.9kWh

WLTCモード電費

166Wh/㎞

205Wh/㎞

WLTCモード一充電航続距離

580㎞

455㎞

フロントまわり

シャシー部品の配置図を前方から。フロントのサスタワー上部は、筋交い状のブレースで前後から支えられている。リヤはサブフレーム取り付け点に、同様のブレースが見られる。リヤサスペンションのスプリングはエアバッグ方式。前後アクスルの前方には、アクティブスタビライザー用のアクチュエーターが配置されている。

BMW i5
BMW i5

CHASSIS

シャシー

i5のハンドリングを磨き上げるふたつのデバイス

サスペンションの基本構造は5シリーズ共通。フロントは分割ロワーリンク式のダブルウイッシュボーンで、ハイマウントしたアッパーアームと、2本に分割したロワーリンクで構成される。ロワーリンクの仮想交点を利用して仮想キングピン軸を設定し、マスオフセットの縮小を図ったものだ。構造部材はナックルも含めてアルミ合金製。ダンパーとコイルスプリングは同軸に配置されており、サス側はNo.2ロワーリンクにマウントされている。スタビライザー端は、ダンパー外筒に溶接されたブラケットにリンクを介して接続される。

リヤサスペンションは5本のリンクで構成されたマルチリンク方式。ダブルウイッシュボーンの上下アームをそれぞれ分割し、後方にトーコントロールリンクを追加した構造だ。上下アームを分割する理由は、仮想キングピン軸を理想的な配置にすることと、外力によってトーを安定方向に変位させることにある。仮想キングピン軸はアクスルセンターより若干後方にあるように見える。こうすればコーナリングフォースでトーはインを向く。

トーコントロールリンクには強めの前進角が付いており、回生制動やエンジンブレーキ、摩擦ブレーキによってアクスルセンターが後方に移動した際、ナックルの後部を押し出してトーをインに向ける狙いであることがわかる。ダンパーとスプリングはフロントと同様に同軸配置で、アルミ合金製ナックルの上部にマウントされている。i5のリヤスプリングは金属コイルではなくエア式となり、オートレベリング機構を標準装備。乗員数や荷物の量に関わらず、一定の車両姿勢が維持される。ダンパーは前後とも電子制御式を採用。三重管の外筒に、伸び/圧両側の減衰力を共通のバルブで制御するタイプで、ソレノイド駆動によりミリ秒単位の減衰力制御が行なえる。

前後サスペンションは、アルミ製のサブフレームを介してボディに締結される。フロントはラバーマウントを介さない剛結で、リヤはラバーマウントを介したフローティング方式。前後サブフレームはi5専用。eアクスル搭載スペースを確保するため、ICE仕様より全体的に井桁の寸法が大きい。ステアリングギヤボックスはラック&ピニオン方式。センター付近をスローに、切り込むとハイレシオになるバリアブルジオメトリーを採用する。パシャシーワーアシストはラックと平行にモーターを配置した電動式だ。

シャシー技術で注目すべきポイントはふたつ。ひとつ目は、インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング。リヤサスペンションに“リヤアクスル・スリップアングルコントロール”という機構が付いており、トーコントロールリンクを電動アクチュエーターで押し引きすることで、後輪を最大2.5度操舵する。

iXや7シリーズに搭載されているものと同様のシステムで、後輪の操舵角はステアリング舵角や車速に応じて最適制御。低速域では前輪と逆位相に切ることで、最小回転半径を約0.4m縮小。高速域では同位相に切ることで、後輪のスリップ角を増やしてスタビリティを高める。

リヤまわり

シャシー部品の配置図を後方から。フロントサス下のアンダーカバーはアルミ合金製で、名称は“Front Subframe Stiffening Plate”。空気抵抗低減効果はもちろんあるが、主な狙いはシャシーの補剛であることを示すネーミングだ。リヤサスサブフレームの後方には、後輪操舵用のアクチュエーター(Integral Active Steering)が見える。

BMW i5
BMW i5

もうひとつの注目技術は、M60グレードに搭載される“アクティブロールスタビライザー”。スタビライザーを中央で分割し、拘束具合を電動アクチュエーターで制御することで、ロール剛性を自在に変えられるシステムだ。直進時はスタビライザーをフリーにして乗り心地を向上させ、車速や操舵角に応じて拘束力を制御し、操舵応答性や旋回安定性を高める。必要に応じて、逆方向に捻ることもできるという。アクチュエーターは電動式で、BEVの車重でも高い制御応答性が確保できるよう、48Vの専用電源系を組んでいる。出力は電圧と電流の積だから、電圧を上げれば高出力が得られる理屈だ。アクチュエーターの内部構造は明らかにされていないが、筒状の外観からは、プラネタリーギヤ(3ステージ)を使用しているのではないかと思われる。

こうした電子制御アイテムを数多く投入したのは、バッテリー重量による運動性能の不利な点を補うのが目的。アダプティブダンパーやインテグレーテッド・アクティブ・ステアリング、前後アクティブスタビライザーを協調制御することにより、車重を感じさせない操縦性能を確保しており、“駆けぬける歓び”は一切スポイルされていない。

タイヤはeDrive40グレードが前後とも245/45R19で、M60グレードは前245/40R20、後275/35R20。いずれもランフラットではない通常構造のタイヤだが、20インチサイズのフロント用のみ、内部に吸音ウレタンを内蔵したノイズリデューシング仕様となっている。アルミホイールもi5専用品で、樹脂の加飾は飾りではなく、空力パーツ。これによってWLTPモードの航続距離が10km伸びるそうだ。

BMW i5

空力も加味したホイール :ホイールセンターからY字に伸びる5本のスポークの間に装着されたコの字状のパーツは、ホイールの空力補助のためのもの。何気ないパーツながら航続距離にして最大10㎞伸び、消費電力にして100㎞あたり最大0.4kW/h低減するという効果を発揮する。

ADAS

先進運転支援

最新技術を惜しみなく投入

運転支援システムはICE仕様もi5も共通で、“ドライビング・アシスト・プロフェッショナル”を標準装備。センサーはミリ波レーダーと光学カメラ、超音波センサーをフル活用し、車両の周囲360度をセンシング。さまざまな運転支援システムを成立させている。

BMW i5

多数のレーダー、カメラ、超音波センサーで周囲を余すところなく把握:ADAS(先進運転支援システム)には、5シリーズ共通の“ドライビング・アシスト・プロフェッショナル”を採用する。車両の周辺監視には、5基のミリ波レーダーと5個の光学式カメラ、12個の超音波センサーを使用しており、最先端のアシスト機能を実現。一例は“レーン・チェンジ・アシスト”で、ドライバーが車線変更のためにウィンカーを点灯させると、各センサーが周囲の環境を把握し、安全なタイミングでステアリングのアシストが開始される(ドライバーによる安全確認と、ステアリングホイールの保持は必要)。

ミリ波レーダーはフロントグリル中央に前方長距離用を1基、各バンパーコーナーには広角中距離用を4基備えており、前方レーダーを使って、衝突回避軽減ブレーキや、ストップ&ゴー機能付きアクティブ・クルーズコントロール(ACC)を実現。バンパーコーナーレーダーを使って後側方を監視し、レーンチェンジウォーニングやレーンチェンジアシスト、前後両方向の交差車両を検知するクロス・トラフィック・ウォーニング機能を成立させている。

ウインドシールドの上部中央には、光学式単眼カメラを装備。車線の中央走行を支援するステアリング&レーンコントロールアシスト機能や、レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警報)を実現している。また、車両の周囲360度を撮影するアラウンドビューカメラと、前後バンパーコーナーに6個ずつ装備された超音波センサーを使い、高度な駐車支援機能を提供する“パーキング・アシスト・プロフェッショナル”も標準装備されている。

縦列および並列駐車のアシストはもちろん、複雑な切り返しが必要な駐車スペースでも、最初に誰かが模範となる駐車操作をして、それを記憶させておくと、次回からは記憶した場所に到着した時点で駐車アシストが提案され、ディスプレイのボタンをタップするだけで、模範操作に倣った駐車アシストが開始される。この機能は“パーキング・マニューバー・アシスト”という。また、狭い路地の行き止まりに迷い込み、後退を余儀なくされるようなケースでは、“リバース・アシスト・プロフェッショナル”が有効に機能。停止する直前に走行した約200mのルートが記憶されており、アシスト機能を起動すると、後退する際にはそのルートをなぞるよう操舵支援をして、脱出を助けてくれる。

加えて、セキュリティ機能もまた充実している。ドライブレコーダーが4方向に付いており、アラーム・システムはドアロック状態でドアやボンネットが開けられたり、クルマが不自然に傾いたりすると、警告音を発するだけでなく室内外の撮影と録画を開始。同時にコネクティッド機能を使ってスマートフォンに警告が届き、リアルタイムで動画も見ることができる。

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