リサイクルセンターに行くということは、古くなり、終わりが近づいていることを意味すると思う方もいるかもしれません。でも、私の場合はそうではありません。私はBMW iX1プレシリーズです。ご存知なければ、このような説明ではどうでしょうか。私は、パイオニアのような存在として、一般販売の前に、潜在的な問題を特定するために生産されたテスト車両でした。その目的を果たした今、私は新車同様の状態で、次のステップへと進むために非常にワクワクした気持ちでここにいます。実は、ここには以前も来たことがあるんです。正確に言えば、私の一部が、ということですが。現在でも、BMWの車には再生材や再利用材が使われています。だからこそ、ここが自分の家のように居心地良く感じるんですね。
私たちは、車両の中であまり調子がよくない部品を特定することができます。この情報を社内で共有することで、最終的に製品を向上させていきます
リサイクルとは、材料の循環を完了させ、資源を保全し、より効率的に再利用するプロセスです。ウンターシュライスハイムにあるBMWグループのリサイクル解体センターでは、センター長であるアレクサンダー・シュールをはじめとする全員が、将来的にリサイクル率を最大化できるように、いくつもの新しいソリューションに取り組んでいます。この目標を胸に、私や他のすべてのBMW車のリサイクル・プロセスがここから始まります。
私たちはまず、このセンターで歓迎を受けます。ここは、登録事務所での最終的な廃車手続きに必要な「廃車証明書」が発行される場所。私をはじめ、次の段階に進む準備が整ったBMW車にとって、新たな人生の正式な出発点となります。
チェックインしてみると、私たちの中に、なんと映画スターがいるではありませんか。ワクワクしますね! 映画撮影のために特別に改造されたBMW車です。実はBMWグループは、2011年から『ミッション:インポッシブル』(※リンク先は英語サイトです)シリーズのような大ヒット映画の撮影用車両を生産しているんです。撮影終了後、このBMWの映画スターはここに運ばれ、リサイクルされました。きっとアクション満載のすごい人生だったのでしょうね。私も、次の人生では映画スターになれるかもしれません!(➜ 詳しくはこちら:ミュンヘン出身の2人のハリウッドスター(※リンク先は英語サイトです))。
ここではまず、高電圧バッテリーを取り外し、リサイクルの事前の処理を実施します。この後、車両の残りの部分を、標準化されたリサイクル工程で処理します
クルマのライフサイクルに含まれるものは、できるだけ長い間残しておきたいものです。ここでは安全性を確保するプロセスの準備をしますが、まずはバッテリーです。このワークステーションでは、たとえばエアコンの冷媒やブレーキオイルの抽出、冷却水やエンジンオイル、トランスミッションオイルの抜き取りを行います。また、ドリル一体型の専用装置を使った燃料の排出なども行われます。これらの作業が終わると、みんな体が軽くなってリラックスできるんです。
解体中に取り外された部品は、再利用されたり、材料のリサイクルに使われたりします。これには、ダウンサイクルとアップサイクルがあります。触媒から出る貴金属などの貴重な材料は、別の材料の循環の中でリサイクルされます。アップサイクルとは、廃棄された材料を価値の高い用途に再利用することであり、ダウンサイクルとは、廃棄された材料を価値の低い用途に再生することです。正直なところ、私の部品の大半が材料の循環の中にとどまり、新たな使い道を見つけてもらえれば、それでいいんですけどね。
BMWが今後発売を予定しているすべての車両において、多くの部品がリサイクル可能である必要があります。
リサイクルという言葉を聞いて、最初に思い浮かべるかもしれないこと。それは「古いクルマの破砕」です。そう言われると、あのアクション映画のスターでさえも、ちょっと怖くなるかもしれません。私は違いますけどね。ここでは、BMW車の車両本体を機械で圧縮しています。確かに、潰されて粉々にされると思うと怖くなるかもしれません。でも、このステーションから私の第二の人生が始まると思うと、安心感すら湧いてきます。このプロセスが終わると、後に残ったすべての材料片は分類され、それぞれが新たな人生を歩き出すことになります。プラスチック、繊維、鉄、非鉄金属はリサイクルされます。冷蔵庫や缶になるかもしれないし、新しいBMW車になるかもしれません。人生は驚きに満ちていて、だからこそ、そこが魅力なんです。
これで終わりではありません。終わりどころか、新たなライフサイクルの始まりに過ぎません。初めにお話ししたように、私は以前もここに来たことがあります。そしてこれからも、何度も何度もここに戻ってくるのでしょう。資源を守り、環境を保護するために、私のライフサイクルは慎重に設計され、改善されています。最初の設計案から、リサイクルセンターでこの段階に至るまでの、すべてのステップがそうなんです(➜ 詳しくはこちら:持続可能な材料)。このように、資源は循環していきます(➜ 詳しくはこちら:サーキュラー・エコノミーの重視:2040年に向けたサステイナビリティ)。これは、私たちが地球と共生するための生命のエコシステム。私の次の旅は、新型BMW車として参加する映画のセットとなるか、あるいは冷蔵庫として加わる皆さんの台所なのか、それはまだわかりません。しかし、それがどのようなものであれ、車両の材料を最大限サステイナブルなものとして活かせるように人々が頑張っていることを思えば、それだけで私は幸せな気分です。
著者:Narges Derakhshan アート:Verena Aichinger; Lucas Lemuth イラスト:Annu Kilpeläinen