太陽、地球そして宇宙はいつの時代も魅力的な存在でした。英国のバンド、コールドプレイ(※リンク先は英語サイトです。)は早い段階からそのことを認識していました。バンド結成から20年以上を経て、クリス・マーティン、ジョニー・バックランド、ウィル・チャンピオン、ガイ・ベリーマンは自分たちの住む銀河系について前よりさらに真剣に考えるようになったと言います。その存在について概念的に考察するだけでなく、資源にできる限り配慮したいと考え、それを実行するにあたってBMWがサポートを行うことになりました(➜ さらに読む:How BMW protects our environment - 環境保護に向けたBMWの取り組み)。
彼らは「2019年、自分たちのツアーが環境に与える影響やカーボン・フットプリントに関する調査をサステイナビリティの専門家チームに依頼しました」とコールドプレイの公式サイト(※リンク先は英語サイトです。)で語っています。これによって彼らは、CO2排出の回避、あるいは少なくとも削減する方法を見出すことができました。それを実現するためには、ツアー自体の企画や移動手段の工夫、飛行機での不要な移動を避けること、再利用可能でサステイナブルなバイオマテリアルおよび再生可能エネルギーの使用などが必要になります。その中でBMWが関わるのは最後の項目、再生可能エネルギーです。7月に生産終了となったBMW i3のセカンド・ライフ・バッテリーを、コールドプレイのライブ用電力を貯蔵するバッテリーとして使用することになったのです(➜ さらに読む:Goodbye, BMW i3 - さよなら、BMW i3)。このリサイクル可能なバッテリーは、すでにワールド・ツアー「Music of the Spheres」の一部のライブで使用されています。
ミュンヘンのBMW本社からそれほど遠くないドイツ南部のヴュルツブルクで、コールドプレイの環境保護対策のための準備が本格化しています。電気設備、自動化技術、蓄電システムなどを手掛ける家族企業のベック・オートメーションでは、BMWの協力を得て、BMW i3に搭載されていたバッテリーをライブ機材用の巨大なモバイル・バッテリーとして再利用する準備が進められました(➜ さらに読む:All about how to charge an electric car - 10のステップで、電気自動車の充電をマスター)。
BMW i3のバッテリーを車両から取り出して使用するために、まずは適切なケースが必要でした。ベック・オートメーション(※リンク先はドイツ語サイトです。)のCEOで認定電気技師の資格を持つベルント・バウムガルトナーは、長さ2メートル、幅1メートル、高さ1メートル20センチに及ぶコンテナについて説明しました。複数のバッテリーを組み合わせ、コネクター・ソケット、冷却システム、制御ボックスを備えたバッテリー・システムが構築されました。コールドプレイのライブのために、それぞれ4つのバッテリーを水平に配置したこのコンテナが合計で20個用意されました。「BMW i3のバッテリーはコンパクトでエネルギー効率が高く、そして何より安全です」と、バウムガルトナーは述べます。「極めて安全性が高いため、大勢の人々が集まるようなイベント会場で今回のように車両から取り外して使うには最適です」
コールドプレイの最新ツアーの一会場となっている、スコットランドのグラスゴーにあるナショナル・スタジアム「ハムデン・パーク」(※リンク先は英語サイトです。)には、ソーラー・パネルと小型風力タービンが待機していました。2時間にわたるライブに必要な電力を作り出すためです。さらに観客エリアにはキネティック・マット(発電床)も設置されて観客はその上で踊って愉しめるようになっています。この観客の動きでも電力が生み出され、ほかに設置されたエアロバイクでも同じように発電が可能です。
スコットランドのスタジアムで生み出されたグリーン・エネルギーはかつてBMW i3に搭載されていたバッテリーに蓄積され、スポットライトやギター、そのほかライブに必要なあらゆる機材に供給されます。バッテリーが電力の貯蔵用タンクとしても電力源としても機能するというわけです(➜ さらに読む:The material cycle of a battery cell - バッテリーセルのマテリアルサイクル)。また、バウムガルトナーはこのバッテリーを、特殊なインバーター・システムを使えば世界標準のAC電源や三相電源に接続できるDCバッテリーとも称しています。
BMWのカスタマー&ブランド担当シニア・バイス・プレジデントを務めるイェンス・ティーマーは、最近、コールドプレイとのコラボレーションと、緊密で創造性に富んだ共同プロジェクトとしてのサステイナビリティに関する互いの認識について言及しています。ライブでのBMW i3のバッテリーの活用に加え、ミュンヘンで開催されたIAAモビリティ2021では、コールドプレイがメタバース空間「BMW JOYTOPIA」に参加し、BMWと共に技術の進んだ未来におけるモビリティのデモンストレーションを行いました。それは今回のコラボレーションの当事者として両者が提起したグリーン・ミッションであり、再利用可能なバッテリーの設計から始まり、新たな次元のデザイン、そしてリサイクル・コンセプト・カー「BMW i Vision Circular」による完全にサステイナブルなモビリティのビジョンで締め括られました。真の循環型思考、それこそがBMWとコールドプレイの提言です(➜ さらに読む:Circular design explained(※リンク先は英語サイトです。) - 循環型デザイン)。
グラスゴーのコンサートで気分はエレクトリック。クリス・マーティンがライトに照らされた巨大な丸いステージに飛び出し、「You've got a higher power(君にはすごい力がある)」とBMW i4とBMW iXのキャンペーン(➜ さらに読む:Born electric(※リンク先は英語サイトです。)– 生まれながらにエレクトリック)にも使われた曲を歌うと、ステージ横の丸いディスプレイにバンド・メンバー、地球その他の銀河の画像が交互に映し出され、その偉大な力を感じることができます。コールドプレイはいつものように、自分たちの方向性に忠実に、宇宙について歌いますが、「This joy is electric - and you’re circuiting through(この歓びは刺激的、そして君は循環している)」のところでは、「真の循環型思考」がかつてないほど強力に打ち出されます。
コンサート・チケットを購入した人は、それぞれ、さらなるサステイナビリティ・プロジェクトをサポートすることができます。グッズには主に天然繊維とリサイクル可能な布地が使用され、観客には完全に堆肥化可能なコンポスタブル素材でできたLEDリストバンドが配布されます。このリストバンドはイベント終了後には返却する仕組みで、以降のライブで再利用できるようになっています(➜ さらに読む:Sustainable into 2040 - 2040年に向けたサステイナビリティ)。これは、コールドプレイの宇宙へのオマージュのように先進的で、インスピレーションに満ちた、BMWではすでに行われているサイクルです。
BMW i3のバッテリーについて
- コールドプレイはライブにBMW i3のバッテリーを採用した最初のバンドです。
- BMW i3のバッテリーは非常に安全性が高く、幼稚園用の電源として利用できるほどです。
- BMW i3に搭載されていたバッテリーは、今回のようなライブで10年以上使用できると推定されています。
- BMW i3は、バッテリーに加えてエア・コンディショナーも再利用が可能です。
記事:Nadja Dilger、アート:Verena Aichinger、Madita O’Sullivan、アニメーション:Shira Inbar、写真:Maximilian König