トム・バインダーが語る
BMW ビジョン ノイエ・クラッセの革新的なライト・デザインと、その基本原則である明瞭さと光がもたらす表現力について、BMW Groupのライト・デザイン・プロジェクト・リーダーに話を聞きました。
「ライトは、BMWブランドを形あるものにすると同時に、親密で人間的なつながりをも生み出します。BMWのライト・デザインは、丸い一対のヘッドライトから、アイコニックなLEDの サイドライト・リングに至るまで、数十年にわたって進化を遂げてきました。進化において常に目指してきたのは、クルマとドライバーとの強い絆を生み出すことです。モダンでミニマルでありながら、エモーショナルな印象を併せ持つ特徴的な4灯式のヘッドライトは、BMW ビジョン ノイエ・クラッセにも受け継がれており、新たな解釈を加えて、リヤ・ライトにも用いられています」
大切なのは体験の価値であって、ただ体験の実現のためだけに技術を使うことではありません。
時間帯や季節、場所、あるいはその日の移動状況に応じて、将来のクルマはAIとドライバーの行動を学習した結果を利用し、今どのようなライティングが適切かを認識できるようになるでしょう。例えば、光の演出と効果音で注意を引かせるシーンや、穏やかなライティングを照射するシーンなど、さまざまです。キドニー・グリルや4灯式のヘッドライトといったBMWブランドの特徴的な要素を残しながら、個性を表現するための選択肢も幅広く提供する、まさにデザイナーの腕の見せ所です。
一日の目覚めを告げる演出と特徴あるサウンド
BMW ビジョン ノイエ・クラッセに乗り込む際には、各ドライバーが設定したプロファイルが車両に個別に反映され、ライティングで迎えるだけでなくさまざまな情報までも表示します。例えば、クルマを一目見ただけで、現在充電中かどうかを知ることができるのです。ヘッドライトが果たす通常の機能に加えて、このような人とクルマのコミュニケーションの実現、言い換えるなら実世界とデジタルの融合は、まったく新しい照明の機能と言えるでしょう。クルマが人とそのニーズを認識し、理解して、提示する。BMW ビジョン ノイエ・クラッセは、もはや単なる機械ではなく、仲間でありパートナーなのです。
ラジエーター・グリルを彷彿とさせるデザインは、個別に制御可能なライト・エレメントによって構成され、印象的な3次元の奥行きを表現します。
BMWにとって、Freude(歓び)は常に革新と画期的なアイデアから生まれてきました。近年、BMWはすでにレーザー光線を使ったヘッドライトで革命をもたらし、技術的にもデザイン的にも新たな可能性を生み出しています。進化し続ける BMWのイノベーション・リーダーとしての誇りは、BMW ビジョン ノイエ・クラッセのライト・コンセプトにも表れています。
ブルーの半導体レーザー光をイエローの蛍光体に投射することで、太陽光に匹敵する白色光を得ることが可能です。そのテクノロジーはBMW ビジョン ノイエ・クラッセにも搭載され、光を用いた新たなフロント・セクションのデザインへと進化を遂げます。浮いているかのように見えるデザイン・エレメントが、突然光源に変わるのです。
特許取得の手法によって、3Dプリントされたライト・エレメントを、さまざまな階層に分布させ、正確な順序で制御することができます。
BMW ビジョン ノイエ・クラッセは「人」に焦点を当てています。ライトは繊細な脇役に徹し、これまでにない高揚感をもたらします。
LED技術の進歩により、その典型的な冷たさを感じさせる白い光は、当初は時代の先進性の象徴として自動車に導入されていきます。しかし、BMWの照明デザイナーたちは、この技術を使って温かみをもたらすことに常に関心を寄せてきました。人のニーズの多様性は、BMW ビジョン ノイエ・クラッセのインテリアに特に顕著に表れています。高い注意を必要とする運転の場面ではクリアでニュートラルな印象を、朝の外出時には温かみのある癒しの空間をもたらします。また、周囲の光や色の雰囲気さえも、クルマのデジタル知能が拾い上げてインテリアに再現し、透明感ある開放的な空間を生み出すことができます。
車内では、何よりもドライバーや同乗者のニーズに応えるためにライトが使用されます。
AIとスマート・テクノロジーの融合は、これからの世界には不可欠です。また、耐久性、修理のしやすさ、ひいてはリサイクル性の高さも求められます。LEDおよびレーザー技術は、クルマが寿命に達するまで使える設計となり、デジタルの進歩によって、新しい照明機能を後付けすることが可能となり、長期間の使用にも対応することができます。
BMWの車両開発に携わるさまざまな部門間の連携は、新たなレベルに達しています。車両デザイン、照明デザイン、音響デザイン(➜あわせてお読みください: 電気自動車の駆けぬける歓びを、サウンドでどのように表現するか)、すべては連携して行われます。デザイナーとエンジニアは、お互いのアイデアを実現するために互いに協力します。技術の進歩は常に新たなインスピレーションをもたらし、輝く未来、人を主役に据えた未来、すなわち Freude(歓び)に満ちた未来の想像へと導いてくれます。
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記事:タッシロ・ヘーガー、アート:ルーカス・レムート、ヴェレーナ・アイヒンガー、映像:エイモス・フリック&ロバート・ヴィスニエフスキー