急速充電が可能な公共充電ステーションから適正なプラグまで:ここでは、電気自動車の充電に関するあらゆる疑問に対して、BMWのエキスパートであるジョン・デ・ボアー、ターニャ・オッテ=ティレット、そしてカリン・クリューガー博士の協力を得ながらお答えしていきます。
電気自動車の充電について知っておくべきポイントを、以下の10のステップでマスターしていきましょう。
- 電気自動車はどこで、どのように充電できますか?
- 公共充電ステーションはどのようにして見つけることができますか?すでに十分な数の充電ネットワークがありますか?
- 電気自動車を自宅で充電するには何が必要でしょうか?
- 充電はどのようなプロセスで行われるのでしょうか?
- 電気自動車の充電ステーションに様々なタイプのプラグがあるのはなぜでしょうか?
- 電気自動車の充電にはどれくらい時間がかかりますか?充電時間を決定する要因は何でしょうか?
- 急速充電ステーションでの充電はバッテリーにどのような影響を与えるでしょうか?
- 電気自動車の充電にかかるコストはどのぐらいでしょうか?また、支払いにはどのような方法がありますか?
- 電気自動車を最も安く充電できる時間はいつですか?
- 非接触充電はどのようなしくみになっているのでしょうか?それは、すでに利用可能ですか?
電気自動車はどこで、どのように充電できますか?
電気自動車をどこで充電する?そんな疑問をお持ちの電気自動車ビギナーの方にとって、現在の充電ステーションのハイテクさは、驚きと戸惑いを抱かせるものかもしれません。そしてその答えは、決して複雑で面倒なものではなく、むしろその逆です。基本的に電気があればどこでも、電気自動車を充電できるのです(➜ こちらをお読みください:知っておきたい、EVとPHEVモデル)。
そうです。電気自動車は自宅や職場、あるいは公共の充電ステーションで手軽に充電できます。今この瞬間にも公共インフラの開発は急速に進められております。日本においては、2015年1月に充電スタンドの数が約10,000ヶ所だったのが、2021年3月現在、約19,000ヶ所にまで増えています。(電気自動車充電スタンド情報 GoGoEVへの登録充電スタンド数)市街地では普通充電(AC)の公共充電ステーションのネットワークが拡大していますが、このタイプの充電ステーションは電気自動車を夜間に充電する場合や、お買い物に出かけた時などの時間を利用して充電するのに適しています。
高速道路では、急速充電(DC)を行うハイパワー充電ステーションの設置も増えています。このハイパワー充電ステーションは普通充電(AC)ステーションの5~15倍の充電容量で、大容量のBEVバッテリーを充電。いつもより少し長めのコーヒーブレイクや休憩中に、航続可能距離を最大限に伸ばすことができます。
答えは単純。どちらでも充電が可能です。
2つの違いは、供給される出力と充電にかかる時間です。日常で使われるほとんどの電気機器は交流電流(AC)で作動しており、家庭用コンセントや通常の公共充電ステーションからの充電もこの電流方式です。これに対し、急速充電は直流電流(DC)を使用していますが、こちらでも問題はありません。EV充電器は自動的にACをDCに変換します。22 kWの出力に制限されるACの充電に比べると、急速充電(DC)ステーションはより高出力なため、充電時間が大幅に短縮されます。
急速充電ステーションの数は、着実に増え続けています。都市圏外に出てからも航続可能距離への不安はもうありません。
公共充電ステーションはどのようにして見つけることができますか?すでに十分な数の充電ネットワークがありますか?
急速に増えている公共充電ステーションとネットワークの進化によって(➜ こちらをお読みください:電気自動車に関する10の通説)、都市圏外を走行している時でも、もはや航続可能距離に不安を感じる必要はありません。車両システムと完璧に統合されたナビゲーション機器、My BMW Appのような自動車メーカーのスマートフォン用アプリを効果的に活用することによって、長距離でも電気自動車での走行を安全に計画することができます。
BMWの公共充電ステーション展開においてプロジェクト・マネージャーを務めるジョン・デ・ボアーは、こう説明しています。「例えば電力供給会社の中に含まれるIONITYネットワークは、BMWと密接に連携して2021年末までに欧州各地に400基の急速充電器を設置する予定です。そして、こうした設備はその後もますます増える傾向にあります。」
電気自動車を自宅で充電するには何が必要でしょうか?
電気自動車を充電する最も簡単で便利な方法は、もちろん自宅のガレージで電気自動車をプラグインすることです。ユーザーへの調査では、現在自宅での充電が最も一般的な方法となっており、米国エネルギー省も電気自動車の充電の80%以上が自宅で行われていると述べています。
自宅での充電に必要な装備は、ウォールボックスと呼ばれる家庭用充電器です。ウォールボックスは、電気工事士によって適切な住宅用設備と併せて設置され、より高い充電出力によって大幅な充電時間の短縮を実現します。
また、ウォールボックスのユーザーは、電力供給会社を自由に選ぶことができます。つまり自宅での充電は、便利で手軽なだけでなく、公共充電ステーションに比べるとはるかに経済的であるとも言えるのです。なお、ウォールボックスなどの充電機器は、電気自動車メーカーが推奨する適切なものを使用してください。
ウォールボックス – それは自宅で、いわば自分だけの充電ステーションで電気自動車を充電する最も簡単な方法です。BMWでは個人用のEV充電ステーション、BMW iウォールボックスをご提供しています。充電出力は22 kWです(現在BMW電気自動車のAC充電の最大出力は11 kW)。ウォールボックスに関するアドバイスや専門的な設置は、BMW eインストレーション・サービスをご利用いただけます。
※日本仕様とは異なります。
充電はどのようなプロセスで行われますか?
基本的に、電気自動車の充電は、バッテリーで動く他の機器と同じくらい簡単です。プラグを接続すると充電プロセスが始まり、コックピットのディスプレイやMyBMW Appに充電が計画通り進んでいるかどうかが表示されます。バッテリーが完全に充電されるとプロセスは終了です。
これは自宅のガレージで充電する際の説明ですが、公共充電ステーションでの充電もそれほど面倒ではありません。
電気自動車の充電ステーションに様々なタイプのプラグがあるのはなぜでしょうか?
長年に渡り、電気自動車の充電用に様々なタイプの充電ケーブルとプラグが開発されてきました。BMWのベーシックな家庭用充電器には、自宅の家庭用コンセントに差し込むことができる標準タイプの充電ケーブルが含まれています。一方、公共のAC充電ステーションでの充電には、BMWモデル用のタイプ2プラグと併用される公共充電ケーブル(モード3)が推奨されます。
※日本仕様とは異なります。
急速充電(DC)においては、統一された世界基準はまだありません。北米ではCCS1が定着する一方、欧州ではCCS2が、アジアではCHAdeMOやGB/T標準が定着しています。高速道路のサービスエリアなどで急速充電ステーションを利用する場合、ご自分の充電ケーブルを車内に置いたままでも大丈夫です。高速充電ステーションには、一体化された充電ケーブルが装備されているため、自分のケーブルを持ち歩く必要はありません。
電気自動車の充電にはどれくらい時間がかかりますか?充電時間を決定する要因は何でしょうか?
電気自動車の充電時間は、バッテリーのサイズ、最大充電出力、そしてもちろん、充電開始時にどれくらいのバッテリー残量があるかによって決まります。基本的に電気自動車では、急速充電(DC)より普通充電(AC)の方が時間がかかります。BMW Chargingプロダクト・マーケティング・マネージャーのターニャ・オッテ=ティレットによると、例えば充電出力11 kWのウォールボックスでBMW iX3を充電する場合、最大7時間ほどかかりますが、ハイパワー充電および150 kWの充電出力なら、iX3はわずか34分で80%まで充電が可能です。
※日本仕様とは異なります。
インテリジェントなオペレーション戦略により、バッテリーを効率的かつ迅速に充電できるようになっています。
急速充電ステーションでの充電はバッテリーにどのような影響を与えるでしょうか?
急速充電は、出力の低い充電ステーションで充電するよりもバッテリーにかかる負担が大きいと言われています。しかし心配はいりません。バッテリーを保護するために、完全放電を防ぐ機能だけでなく、急速充電中の温度を調整する機能も備わっています。充電のエキスパートであるカリン・クリューガー博士は「バッテリーの寿命を最適化には、インテリジェントなオペレーションと充電ストラテジーが重要なのです」と語っています。
バッテリー、容量、プラグ・タイプ:
アンペア時(Ah)とは、電荷の測定単位です。これは主にバッテリーの使用可能な充電容量を示し、蓄電池の公称電荷を示すのに使用されます。
電気自動車では、バッテリーに蓄えることができるエネルギー量を、さまざまな車種でそのまま比較できるように、AhではなくKWhで示されることもよくあります。
バッテリーは、電気エネルギーを電気化学的に蓄えるひとつの手段です。今日の電気自動車に採用されている蓄電手段は、リチウムイオン・バッテリーです。このバッテリーの価格は、容量つまりkWhで測定されるエネルギー量に基づいています。
充電出力はキロワット(kW)で表され、電気自動車のバッテリーを充電ステーションで充電するのにかかる時間の重要な基準となります。家庭用コンセントの出力は約2.3kW、ウォールボックスまたは普通充電(AC)ステーションは最大22kW、急速充電(DC)ステーションは最大50kW、CCS急速充電器は最大150kW、欧州のIONITYハイパワー充電器(HPC)は最大350kWです。しかし実際に車両を充電する出力は、充電装置の出力だけでなく、車両本体の制限によっても異なります。
充電時間は、正味容量を充電ステーションの充電出力で割ることによって概算できます。例えば、BMW i3の37.9 kWhの容量を22 kWの充電ステーションの充電出力で割ると、充電時間は約2時間弱となります。ただし、実際には車両は常に最大可能充電出力を連続して使用できないことを留意しておく必要があります。また、実際の充電時間は、周囲の温度、バッテリーの消耗状態、車両が処理できる最大充電出力など、さまざまな要因の影響を受けます。
プラグタイプ:標準のプラグタイプは、国によって様々です。米国とアジアではタイプ1のプラグが標準であり、欧州ではタイプ2のプラグが主流となっています。急速充電ステーションでは、このプラグ・タイプが拡張されて、CCS(Combined Charging System)プラグとなっています。どちらのプラグタイプも車両に搭載されています。
バッテリーの定格出力または公称容量は、バッテリーから引き出すことができるエネルギー量を示します。この数値はキロワット時 (kWh)で示され、1キロワットの出力で1時間に消費または生成されるエネルギー量を表します。37.9kWhの定格または公称容量と0.131kW/kmのエネルギー消費量を持つBMW i3の航続可能距離は、理論的には約300kmということになります。ただし、運転スタイルや低い外気温、山岳ルートなどの要因によっては、走行時に必要とされるエネルギーが増加するため、実際には最大260kmの航続可能距離が想定されます。
電気自動車の充電にかかるコストはどのぐらいでしょうか?また、支払いにはどのような方法がありますか?
電気自動車を充電する最も安価な方法はもちろん、自宅で家庭用充電器のウォールボックスを使用することです。この方法ではご自身で電力会社を選ぶことが可能で、さらに地域によっては、個々のニーズと車両の充電容量に合わせた契約を選択することもできます。一方、公共の充電ステーションを利用する場合の費用は様々です。各地域の電気料金や電力会社の価格設定によって異なります。
電気自動車を最も安く充電できる時間はいつですか?
電気はいつでも利用できますが、そのコストは時間帯によって異なります。「だからこそ、インテリジェントな充電マネジメントが必要不可欠なのです」とクリューガー博士。「車両をウォールボックスに接続するタイミングによって、コストにも大きな差が生じます」。需要が低い時間帯にバッテリーを充電することを。多くの電力会社はおそらく、再生可能資源からの余剰電力を一時的に保存できない夜間の利用に対して、割引料金を提供しています。
外出先で公共充電ステーションを利用する場合、通常は価格設定を自由に選ぶことができません。最もわかりやすい方法で、単に消費されたkWh数に応じて請求されるというのがほとんどです。中には分単位で料金を設定したり、追加時間をベースにして料金を請求するプロバイダーもあります。
非接触充電はどのようなしくみになっているのでしょうか?それは、すでに利用可能ですか?
電気自動車の最新技術に関する多くの情報を入手したら、すぐにそれが未来に役立つか見極める必要があります。なぜなら、その頃には、家庭用充電器や公共充電ステーションはどちらも時代遅れになっているかもしれません。近い将来、電気自動車の充電は、電動歯ブラシやスマートフォンを帯電パッド上で充電するのと同様に簡単になるでしょう。交流磁場を利用した非接触送電です。地上に設置された送電コイルと車両側の受電コイルによってバッテリーが充電されるしくみで、自宅、公共の駐車場、あるいは路上でさえも充電できるようになる可能性があります。
記事:フランク・ギース、イラスト:ルネ・フィスカー