運転が楽しくない、高価である、危険-電気自動車についての通説はたくさんあります。ここではBMW専門チームの助けを借りて、何が真実で、何が真実でないのかを明らかにしたいと思います。
電気自動車の走行距離については様々な声が無数に出回っています。
気温が下がると、EVではそれほど遠くまで行けないと人々が話すのを耳にしたことがあるでしょう。初期に開発された電気自動車については、その通りだったかもしれませんが、もはやそれは当てはまりません。現在の電気自動車のバッテリーは大幅に改善されており、アプリを介して、出発前にバッテリーと車内の事前調整を行うシステムが標準装備されている場合も多くなりました。
電気自動車の走行距離は、最終的にはドライバーの行動に依存すると、BMW チャージング・プロダクトマネージャーのカリン・クルーガー氏は説明しています。
電気自動車が100kmごとに停止して充電しなければならなかった時代はもう終わりました。
「BMW i3の日常的な使用における最大走行距離は約270kmです。ユーザー調査によると、これは平均的なドライバーの日常的ニーズを上回っています」とカリン・クルーガーはさらに説明します。将来的には、1回の充電で最大600kmをカバーできるようになります。毎日の使用や週末のリラックスした旅行には、これで十分であり、休暇に行くのにも十分です。
BMW i3の日常的使用における最大走行距離は約270kmです。
家庭用の電源コンセントを利用した場合、電気自動車のバッテリーが空の状態から完全に充電されるまでには1晩かかります。これは真実です。しかし、BMWiウォールボックス・プラスと急速充電技術を利用することにより、充電時間を大幅に削減することできます。
充電についての議論では、毎日の通勤に使用されている多くの車の走行距離は1日あたり平均65kmで、電気自動車の1回の充電で容易に賄うことができているという事実が見逃されています。
将来的には、自宅(夜間)や職場、駐車場などどこでも最適化された充電ができることがポイントです。
これは、充電に関する電気自動車の設備の問題につながります。電気自動車の充電ステーションは至る所に設置されつつあり、産業およびエネルギーの供給業者はネットワークを着実に拡大しています。ほとんどの大都市圏はすでにカバーされており、主要な高速道路に急速充電ステーションが構築されています。
数年後には、人口の少ない地域でも、電気自動車のドライバーが立ち往生する心配がないくらいに、十分な充電ステーションが利用できるようになるでしょう。
バッテリーセルの生産に必要な原材料を確保するのに、世界の一部の地域では、その生産に多くの人材が割かれています。そこでBMWでは、原材料サプライヤーと持続可能で公正な生産を保証する契約を結びました。
2020年以降、レア・アースは使用されなくなり、オーストラリアとモロッコからのみ供給されるコバルトの使用も削減されています。BMWはサプライチェーンの完全管理を非常に重視しており、環境基準の遵守と人権の保護を最優先事項としています。もう1つの目標は、バッテリーのリサイクル性を改善し、2次的な利用方法を見つけることです。
電気自動車についてよく言及されるもう1つのポイントは、バッテリーが弱点であるということです。しかし実際には、バッテリーは従来の車のドライブユニットほど否定的には捉えられておらず心配する必要はありません。
カリン・クルーガー氏は、現在、電気自動車のバッテリーの寿命について、それらを燃焼エンジン自動車と比較するには十分な関連データがないと指摘しています。
前提として、電気自動車のドライバーは耐久性についてさほど心配する必要はありません。BMWの電気自動車のバッテリーパックの耐用年数は、使用する電気自動車用に特別に設計されています。2020年1月の時点で、BMWはバッテリーを最大8年間または100,000kmの走行を保証しています。電気自動車のドライバーに知っておいてほしいことは、急速充電は従来の充電よりもバッテリーに高い負荷かけているということです。
電気自動車に対する電気の供給方法は、環境への影響という点において重要な役割を担っています。もし再生可能エネルギーを利用する場合は、日常的な使用による環境への影響はほとんどありません。しかし、たとえば、石炭などを使用して発電する場合、環境への影響は非常に大きくなります。車が環境に影響を与えるもう1つの要因はバッテリーの生産工程におけるCO2排出です。しかし、一般的な発電によるCO2排出と、バッテリー生産工程のCO2排出をそれぞれ加味しても、電気自動車の方が優位です。2017年以降、BMWは再生可能エネルギーから作られている電力を購入することにより、ヨーロッパでのCO2排出量を最小限に抑えることを約束しています。
電気自動車を日常的に使用する場合、生産に伴う初期CO2の排出量は早い段階で相殺されます。内燃機関の自動車と比較すると、約45,000kmの走行でカーボンニュートラルを実現することができます。
電気自動車は長距離走行をするほど、初期投資に対するコストパフォーマンスが向上しますが、それは日々の走行距離が限定的な場合により顕著です。例えば日々の走行距離が50kmを超えない場合、その都度の走行のコストは、内燃機関の自動車と比較して電気自動車が確実に優れています。これはつまり都市部で電気自動車を所有し、100kmを超えるようなドライブをする機会が限定的な場合に、電気自動車のコストメリットを実感しやすいということを意味します。
BMWは2023年までに少なくとも13の新しい完全電気自動車を提供する計画です。
メインテナンスコストもディーゼルやガソリン車よりも優れています。オイルの交換、タイミングチェーンやタイミングベルトのチェックも必要ありません。時間の経過とともに節約度はさらに増します。電気モーターは、いわゆるエンジンよりも可動部品が少ないため、摩耗が少なく、注意する必要があるのは、回生ブレーキが錆びないようにすることだけです。
充電に高い電気料金が必要というのも過去のものです。利用ニーズに基づく料金プランとインテリジェントな充電機能により、電気自動車の充電はこれまでになく最適化されています。そして、電気はまだガソリンやディーゼル燃料よりも安いため、電気自動車を充電するコストパフォーマンスは高くなります。
新しいテクノロジーが開発されるたびに、人々はまずは疑いの目を向けます。安全であるか?信用できるか?
アクション映画には、電気自動車の火事や事故後の爆発シーンが含まれていることがありますが、実生活において、電気自動車に危険はありません。カリン・クルーガーが言うように、「電気自動車は内燃機関の自動車と同じくらい安全です」。安全でなければ、それらを売ったり、路上で運転することは許されないでしょう。
安全を確保するためには、いくつかのシステムが設置されています。たとえば、事故が発生した場合、バッテリーの電流フローは即座に遮断されるため、ドライバーや緊急対応をする方への感電の危険はありません。
日常生活において、低速運転をしているとき、電気自動車は内燃機関の自動車よりも静粛性に優れています。これにより、都市の騒音公害が大幅に減少します。電気自動車は歩行者がその接近を確実に知ることができるように、時速20kmまでの速度の場合には人工の走行音を出します。BMW i3は時速約30kmまではこの人工音を発生させ、加速するにつれて徐々に消えていきます。
電気自動車は、内燃機関の自動車と同じくらい安全です。
電気自動車を取り巻く最も永続的な通説の1つは、現在の電力網では全電気自動車に電力を供給することができないということです。実際には、すべての人が同時に電気自動車に切り替えるわけではないので、これは大きな問題にはなりません。
大事なポイントは充電時間の最適化です。例えば社会全体がより多くの電力を必要としている時間帯は、日中であれば太陽光発電による充電を増やしたり、夜間は風力発電を積極的に活用したりすることが考えられます。
電気自動車のインフラストラクチャが成長するにつれて、電力網をアップデートし、将来のエネルギーニーズに適切に対応し、再生可能なエネルギーを供給することが出来るようになるでしょう。
石油資源が有限であるという理由以外でも、内燃機関の自動車の時代が終焉を迎えることは避けられません。代替ドライブトレイン技術は、環境と気候を保護する唯一の選択肢と言っても過言ではありません。現時点では、バッテリー電気自動車または燃料電池自動車が市場を支配するかどうかを予測することはできません(➜参照:電気自動車とプラグイン・ハイブリッド・モデルの特徴)。しかしながら電気自動車が将来、大きな役割を果たすことは間違いありません。電気自動車こそ、意欲的なCO2排出量目標を達成できる唯一の方法なのです。将来、BMWがそう計画しているように様々なタイプのドライブトレインが路上に混在すると予想されます。
電気自動車はあなたの日々の運転に関わるニーズを完璧にカバーすることができます。バッテリーに代わる興味深いものは、燃料電池技術の自動車です(➜参照:モビリティの未来を創造する水素燃料電池車とは?)。ハイブリッド電気自動車はすでに一般に広く浸透しています。電気自動車は、その形式に関係なく、自動車の未来なのです。
電気自動車は運転するのが楽しいですか?答えは「はい」です。 私たちはあなたの足が初めてアクセルを踏んだとき(実は、もはやアクセルペダルと呼ぶのは正しくないのですが)、私たちに同意することを保証します。走り出しはまさにスムーズで、ほとんど音もなく滑り出すかのようです。何も特別な操作は必要ありません。必要なトルクを生じさせるために一定のエンジン回転数に達する必要がある内燃機関の自動車とは異なり、電気自動車は動き出した瞬間から最大のトルクを発生します。赤信号が青信号に切り替わった瞬間、真っ先に先に進みたいのであれば、電気自動車がお勧めです。コーナリングも快適です。これは、通常、比較的重いバッテリーが、車の車台に配置されているため、低重心が確保され、路面にしっかり接地できるからです。ベンジャミン・バックシュ(Wallboxes BMWチャージング プロダクトマネージャー)が言うように、BMWの電気自動車において、運転が楽しさが犠牲になることはありません。
そもそも、運転の楽しみの定義は何でしょう?電気自動車で景勝地の道を滑らかに走ることも、その楽しみに加わることになるでしょう。運転にかかるコストを節約できていることや、自らの運転が環境に負荷を掛けていないこと認識しながら運転を楽しむことも、新たな運転の楽しみに加わるかも知れません。そして、すこしゆっくり過ぎると感じたらeペダルを踏みこめばよいのです。
著者:ニルスアーノルド;アニメーション:トミー・パーカー