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BMWキドニー・グリル:13のデザイン

記事を読むのに必要な時間:約7分
1933年以降、BMWのほぼすべての車両のフロントには、ツイン・キドニー・グリルが採用されています。ツイン・キドニー・グリルのデザインは、時間の経過とともに、よりスマートで機能的なものへと進化しましたが、今も変わらずブランドのシンボルとなっています。今回は、そんなBMWキドニー・グリルの歴史を見ていきましょう。

2022/8/16

BMWについて

キドニー・グリルがないBMWなんて、想像できないですよね。BMWの象徴であるキドニー・グリルは約90年間、コンセプト・カーから量産モデルまで、BMWのほぼすべての車両のフロントを飾ってきました。新しい推進技術の採用と冷却機能の撤廃により、車両前面のデザインに新たな選択肢が広がりました。そしてこれは、腎臓(=キドニー)の形に似た、グリルデザインの変遷にも影響を与えています。それでは、グリルの進化に注目して、BMWの歴史を見ていきましょう。

BMW 303(1933)

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BMW 303は、次の2つの点でBMWの歴史におけるマイルストーンとなっています。第1に、この中型セダンはBMW初の6気筒モデルであること、第2に、約90年経った今でもBMWを特徴づけるデザイン・アイコンを備えた車両であることです。このアイコンこそがまさに、のちにキドニー・グリルとして知られることとなる、一対の腎臓の形をした吸気口です。当時の自動車のデザインにおいて、センター・バー(通常は、クローム・メッキ加工されたもの)で分割されたラジエーター・グリルは、決して珍しいものではありませんでした。しかし、BMW 303は、グリルの上方と下方が丸みを帯びたデザインで、上部アーチの間には青と白の四分円のBMWエンブレム(➜ さらに読む:BMWロゴ - 由来と歴史)が掲げられていました。そのラジエーター・グリルにより、BMW 303は、高尚な彫刻のような印象を獲得しました。そして、見覚えのあるグリルのスタイルが生まれたのです。第二次世界大戦までに、有名なBMW 327 / 328などの各モデルにおいて、ツイン・キドニー・グリルはより細く、よりエレガントなデザインになりましたが、いずれもBMW 303が確立した形状を基にしています。

BMW 503(1956)

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1956年、BMWは「バロック・エンジェル」と呼ばれたBMW 501 / 502に加え、クーペ/コンバーチブル・スポーツカーのBMW 503を投入し、シリーズをより強化しました。この4人乗りの車両では、1930年代の背の高いラジエーターは、半分ぐらいの高さになり、完全にクローム・メッキが施された、一対の腎臓の形に変わりました。このデザインは、フェイシアにもぴったりはまるものでした。また、当時すでに、キドニー・グリル以外にもエンジンを冷却するためのコンポーネントが追加されていたため、グリルの小型化が可能になりました。以前のBMW 501 / 502と同様、冷却機能を助けるため、横に2つの吸気口が設けられました。BMW 503に続くクーペとなるBMW 3200 CS(1962)とBMW 2000 CS(1965)はどちらも、似た形状のキドニー・グリルを備えていました。

BMW 507(1956)

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BMW 507 ロードスターはBMW 503と同年に発売されましたが、デザインが進歩的であるという点で、明らかにその姉妹モデルの先を行くものでした。このモデルはBMWで初めて、2つの大きな水平型の吸気口を備えていました。このクルマの生みの親であるアルブレヒト・フォン・ゲルツ伯爵は、キドニー・グリルのデザインにおいて創造的自由を発揮しました。1990年代のデザイン・プロジェクトに至るまで、BMWのデザイナーがこのような自由を謳歌することはありませんでした。事実、BMW 507において、このような大型の吸気口は欠かせないものでした。非常にフラットなボンネットの下にはV8エンジンがあり、そのラジエーターに新鮮な空気を供給する唯一の装備がこの吸気口であったためです。車両のフロントデザインが注目に値するのは、もう一つの理由があります。BMW 507は、「シャーク・ノーズ」として知られるダイナミックに角度を付けたフロント(ボンネットを長く見せ、前方への迫力ある突出を表現する)を備えた、当社初のモデルでした。この外観は最終的に、1960年代の「ニュー・クラス」で確立し、その後1990年代まで、3、5、7 シリーズの車両の特徴となっていきます。

BMW 1500(1961)

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「ニュー・クラス」のミドルレンジ・モデルは、BMWにとってあらゆる点で転機を告げるものでした。この転機は、技術面、商業面から、BMWブランドを代表するデザインにまで及びます。BMW 1500(そしてその姉妹モデルである1600、1800、2000)のBMWキドニー・グリルの2つのキドニーは、BMW 503のものに似ていましたが、初めて繋ぎ合わされ、BMWのモデル史上最も細い、車幅の広い2つの水平グリルの間に置かれました。この第1/第2のエア・グリルを配置したタイプは、02 シリーズ(1966年~)、BMW 2500 / 2800(1968年~)と、関連するBMW 2800 CS クーペ(同じく1968年~)、そして、のちに登場する有名なバリエーションである。BMW 3.0 CS、CSi、CSLなど、1980年代まで、BMWのコア・モデルのフロント・デザインの原型となりました。

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BMW M1(1978)

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1978年より展開された有名なBMW M1ミッドエンジン・スポーツカーは、キドニー・グリルの歴史において、特殊なデザインとなっています。長いフロント部に設けるデザインとして、非常に平らな吸気口が検討されましたが、ブランドの特徴であるキドニーを放棄する選択肢はありませんでした。結果として、キドニーはBMW史上最小クラスのものとなったのです。このクーペは1972年に登場したBMW Turboコンセプト・カーから、インスピレーションを得ています。のちのM1同様、キドニーはパワー・ドームの延長線上に「成型」されているように見えます。そして、ボディ・カラー面によって、第2の細い吸気口から切り離され、両脇にはポップアップ型のヘッドライトが配置されています。M1のBMWキドニー・グリルのデザインは、BMW Z1(1988)とBMW 8 シリーズ(1989)のような、のちのニッチなモデルのフロント部のデザインに反響を与えました。

BMW 3 シリーズ(1990)

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続く1990年には、BMW 3 シリーズの第3世代が、新たに飛躍的な進化をもたらしました。ここでは、BMWキドニー・グリルは平らで水平型のものですが、幅はそれほど広くありません。先行世代のBMW 3 シリーズとは違い、一揃いになっていたラジエーター・グリル部は、再び2つに切り離されました。2つのキドニーはくっきりとした、角を少し丸めた長方形になっており、特筆すべき点としては、他のグリルに隣接する帯状のヘッドライト部分から切り離されています。このデザインは1990年代以降、BMW 7 シリーズ(1994)やBMW 5 シリーズ(1995)、BMW Z3(1995)や次の世代のBMW 3 シリーズ(1998)を経て、BMW X5(1999)の最初の2世代に至るまで、多くのモデルに影響を与えました。

BMW 3 シリーズ(2011)

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BMW 3 シリーズの、のちの3つの世代では、新たな進化がありました。3 シリーズ(F30)の切り離された、比較的幅の広いキドニー・グリルが、初めてヘッドライト面とつながり、サイドのグリルやボディ・カラー面によって、ライト・ユニットと分離されなくなったのです。類似のデザインは、 BMW 7 シリーズ(2015)(目に見えるエア・フラップ・コントロールを備えた最初のモデルでもある)のほか、現世代のBMW 5 シリーズや最新のBMW 6 シリーズ(どちらも2017年)においても見られます。

BMW i3(2013)

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電気自動車BMW i3のフロント設計においては、キドニー・グリルが元々持つ技術的な機能はすっかり影を潜め、審美性が追求されました。このモデルでは、表面をわざと閉じ、ブルーでハイライトした、平らで比較的幅の広いツイン・キドニー・グリルが採用されています。これが相まって、車両に、BMWならではの証だけでなく、革新的な電気自動車としてのアイデンティティももたらしています。閉じたキドニー「グリルズ」は空気力学の観点からもメリットがあります。  BMW i8では、BMW i3のツイン・キドニー・グリルによく似たデザインが見られます。このデザインは、BMWの今後のフル電動モデルすべてにインスピレーションを与えるでしょう。

BMW 8 シリーズ、BMW Z4(2018)

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2018年、現在のBMWの最新モデル2台において、ツイン・キドニー・グリルは、斬新かつ比較的角ばった形状になりました。幾何学的な観点では、グリル(8 シリーズでは繋がっているが、Z4では繋がっていない)は、水平向きの、とても幅の広い五角形となっています。ボディ・カラーの小さいバーが、グリルをその横のヘッドライトに繋いでいます。新しいすべてのBMWクーペと同様、グリルが「下方に広がる」ことでスポーティーな印象が強調され、より低く、より路面に近いフロント部に視覚的なフォーカスを生み出します。機能面では、これらのグリルは、必要なときに開くアクティブ・エア・フラップ・コントロールにより、第2の吸気口として働きます。不要なときは閉じることで空気抵抗を減らします。BMW 8 シリーズのような、キドニー・グリルが繋がっているモデルでは、これらのキドニー・グリルの両半分を繋ぐ留め具の真ん中に、ドライバー支援システム用のカメラが設置されています。

BMW 3 シリーズ セダン(2018)

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現在のBMW 3 シリーズにおけるグリルのモダンなデザインでは、よく知られたいくつかの特徴(結合したキドニー・グリル、直接繋がったヘッドライト面、五角形のフレーム形状)を、新たな特徴と組み合わせています。例えば、キドニー・グリルは、ヘッドライトの上端よりかなり高い位置に配置され、屈曲部の上方、そしてボンネットの方向に延びています。ヘッドライトの上端は、同じ方向に走るキドニー・グリルのエッジにより、互いにつながっています。3 シリーズのM Performanceでは、クラシックな垂直キドニー・グリル・ロッドをメッシュ構造に置き換え、その中に「ナゲット」と呼ばれる小さいくさび形のエレメントを格子状に織り込んでいるのが特徴です。

BMW X7、BMW 7 シリーズ(2019)

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BMWキドニー・グリルのデザインがモデル間でどれほど異なるのか、3 シリーズと2019年にデビューした2つのモデルを比較しながら見ていきましょう。BMW X7と現在のBMW 7 シリーズは、どちらも、上縁に水平方向の曲げ構造が見られることなど、3 シリーズに似たツイン・キドニー・グリルを持っています。しかし、どちらのモデルにおいても、BMWグリルは、3 シリーズのものよりずっと大型で、非常に人目を引き、より存在感のあるものとなっています。

新しいBMW 4 シリーズ クーペのフロント部は、路上で確かな存在感を醸し出します。目を引く垂直キドニー・グリルとアイコニックな二重ヘッドライトが、大胆で自信に満ちたアイデンティティを演出します。
ドマゴイ・ジュケッチ
ドマゴイ・ジュケッチ

BMWデザイン責任者

BMW 4 シリーズ クーペ(2020)

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量産モデル用に開発された最新のキドニー・グリルを発表するバーチャル・ワールド・プレミアが、ミュンヘンにあるBMW Groupのデザイン・スタジオ、BMW Group Classicの歴史的なホール、ドイツのアッシュハイムにあるBMW Groupのテスト・サイトにおいて開催されました。大きく真っ直ぐで前傾した車両フロントのBMWグリルを含む、それぞれの特徴的なデザインに注目が集まります。BMWの歴史やグリルの進化を振り返ると、新しいBMW 4 シリーズ クーペがいかに、有名なスポーツカーの伝統に則っているかがわかります。1930年代以降のBMW 328 クーペも、1970年代以降のBMW 3.0 CSのような傑出した名車も、BMWの魅力的なクーペの歴史の一部です。そして、高い評判、純粋なドライブの愉しみ、レーストラックでの成功を特徴とする歴史に、今また新たな1ページが加わったのです。BMW AGの顧客、ブランド、セールスを担当する取締役会メンバー、ピーター・ノータは、次のように説明します。「新しいBMW 4 シリーズ クーペは、BMWブランドの本質を体現しています。つまり、長い歴史を持つBMWのDNAを未来に向けて解釈しているのです」。

BMW Vision iNEXT(2018)、BMW Vision M NEXT(2019)

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BMWが提供する2台のビジョン・ビークルを見ると、ブランドの大きな特徴であるBMWグリルが、未来のモデルでどうなるのかを感じることができます。フル電動のBMW Vision iNEXTのツイン・キドニー・グリルは、BMW i3のグリルをさらに発展させた形になっており、普段のセンター・バーに印象的な切れ目を1つ設ける試みがなされています。閉じたグリル表面の背後では、カメラ、センサー、その他の運転支援や自動運転のための技術が稼働しています。BMW社内では、これらは「シャイテック(秘密裏に動くハイテク)」として知られています。一方、BMW Vision M NEXTのハイブリッド・スポーツカーでは、BMWキドニー・グリルは、彫刻のように目を引くガラス張りで、車両のフロントにそのまま作り込まれており、表面にはBMWロゴが刻まれています。また、グリル内部のイルミネーションとカラーグラデーションが、さらに立体感を高めています。

記事: Frank Giese, Markus Löblein; 写真:BMW

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