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「駆けぬける歓び」:BMWスローガンの歴史

半世紀以上にわたり、このスローガンはBMWの比類なきドライビング体験を表す言葉として知られてきました。しかし、この象徴的なスローガンは、どのように生まれたのでしょうか?そして、このスローガンがこれまで以上に重要なものとなってきているのは何故でしょうか?答えは、BMWの歴史をめぐるこの旅で明らかになります。

2020/11/30

BMW explained
Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)というスローガンは、ドライバーのポジティブな感情を掻き立てるとともに、私たちが常に目指すべきゴールを示しています。
ヨアヒム・ブリックホイザー
ヨアヒム・ブリックホイザー

BMW Groupコーポレート&ブランド・アイデンティティ責任者

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韻を踏んだ3つの単語:パワフルなブランド・スローガンとは往々にしてシンプルなものです。ドイツ語のBMWのスローガン「Freude am Fahren」は1965年(英語のsheer driving pleasureは1972年)から、広告、CM、イメージ・キャンペーン、ソーシャル・メディアなどで使われています。「このスローガンは、ポジティブな感情を煽動するものです。歓びはBMWブランドの核を成すものであるとともに、常に私たちが目指すべきゴールを示しています。」とBMW Groupのコーポレート&ブランド・アイデンティティ担当責任者のヨアヒム・ブリックホイザーは説明します。

「pleasure(歓び)」という言葉が最初に使われた、1930年代中頃

BMWの歴史を紐解いていくと、すべての宣伝広告キャンペーンにおいて、BMWのロゴ(➜さらに読む:BMWロゴ - 由来と歴史) が不可欠な要素であったことがわかります。ブランド認知や差別化のためのシンボル・マークとしてロゴが初めて使われたのは1917年で、航空機エンジン・メーカーだったBMW(➜さらに読む:驚異の技術:傑出した12のBMWエンジン)が、初の自動車を市場に出す前のことでした。しかし、ブランド・スローガンや文字商標をBMWが示すようになるのは、まだまだ先になってからのことです。「歓び」を意味する「Freude」という言葉がBMWの宣伝広告に初めて登場したのは、1930年代半ばのことでした。1936年、BMW製自動車とオートバイの広告看板で、「Kraftfahren muss Freude bereiten!(ドライビングは歓びであるべき!)」というメッセージが掲げられました。ディーラーから発信される宣伝フレーズでは、BMW車の「Freude und Nutzen(歓びと利便性)」を強調したり、「Freude einer unverbindlichen Probefahrt(試乗に購入義務がないことの歓び)」を取り上げるものもありました。さらに、6気筒BMW 326ツーリングモデルの広告は、潜在顧客に「doppelte Freude am Fahren(2倍のドライビング・プレジャー)」をアピールするものでした。

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BMWのキャッチフレーズ誕生

第二次世界大戦後、BMWはあまりエモーショナルなアプローチを行いませんでした。1950年代に入り、BMWの広告制作のエキスパートたちは、各モデルシリーズの主な特長を謳ったキャンペーン・スローガンをそれぞれに作成します。例えば、ステータス重視の顧客をターゲットにした501/502セダンと503クーペの広告では、「Auto fahren viele.BMW fahren Anspruchsvolle.(車に乗る人は数多くいるが、洗練された人が乗るのはBMW)」というスローガンが起用されました。V8モデルは「Wagen von Welt(世界の車)」、海外の輸出市場向けには「Die Europäische Linie(ヨーロピアン・ライン)」として宣伝されました。

1955年には、BMW Isettaのスローガンに見られるような快活な韻を踏んでいるものも登場します。「Freude haben – Kosten sparen – BMW Isetta fahren(歓びを感じて- コストを抑えて- BMW Isettaに乗ろう)(➜さらに読む:BMW Isetta:救世主、象徴、日常の英雄としての歴史※リンク先は英語です)。BMWの宣伝広告に「Freude(歓び)」というフレーズが再び登場し始めたのはこの時でした。とはいえ、まだそこには“ブランドを定義するスローガン”を作ろうなどという意図は含まれていませんでした。ドイツ語で韻を踏んで耳に残りやすい「Mehr denn je … BMW(これまで以上に...BMW)」というスローガンがたまに登場することもありましたが、BMWのプレスリリースでは「BMW ... eine Klasse für sich(BMW...別格)」がよく使われました。しかし、ブランド全体を網羅するような正式なスローガンは、まだ存在していなかったのです

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言葉の組み合わせから、正式なスローガンへ

こうした状況が変化するのは1960年代の初頭、「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」の市場投入に際し、これまでとは違うマーケティング戦略が必要になった時でした。Sporty(スポーティな)、Reliable(信頼できる)、Emotive(感情に訴える)- これらは当初からBMW製品のクオリティを表現するものでしたが、現在は新しいミッドサイズ・モデルの製品コミュニケーションの中核を成すものとなっています。1964年、BMW 1800のCMは次のようなフレーズで締めくくられていました:「... aus Freude am Fahren.(...駆けぬける歓びのために)」。このキャッチフレーズはその後も他の広告に採用されるようになり、ヘッドコピーや本文の中だけでなく、ついにはロゴと併せて使われるようになりました。1965年、BMWは正式なスローガンとして「Aus Freude am Fahren(駆けぬける歓びのために)」を採用。この言葉はやがてブランド・イメージの構築に不可欠な要素となっていきます。

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BMWモータースポーツとオリンピックにおける、革新的なCI戦略

1970年代には、企業マーケティングのさらなる専門化とブランド・イメージの統一が行われました。1972年、スローガンの文頭にあった「Aus」という単語が削除され、今日の正式なBMWスローガンが誕生します。そして同年、BMWモータースポーツ社を設立。独自の企業アイデンティティを持つサブ・ブランドを打ち出すことで、さらなる一歩を踏み出すことになったのです(➜さらに読む:ブルー、パープル、レッド:BMW Mロゴの歴史)。もうひとつのマイルストーンは、BMWが新たに建築した高層ビルでした。このビルはミュンヘンでオリンピックが開催された1972年に完成し、そのユニークなデザインからすぐに「4シリンダー・ビル」の愛称で知られるようになります。

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世界共通のスローガンへ

1972年に「Freude am Fahren」がBMWの公式スローガンになったのと同時に、輸出市場向けの翻訳版も用意されました。それまでは、自由に訳されたスローガンがばらばらに使われていました。例えば英語圏では「BMW puts pleasure back into motoring(BMWは、運転に歓びを呼び戻す)」や「For the joy of motoring(運転の歓びのために)」あるいは「For sheer driving pleasure(駆けぬける歓びのために)」などと訳されました。フランス語では「La joie de conduire(運転の歓び)、スペイン語では「純粋な運転の歓びのために」が使われましたが、その後いずれも“運転の愉しさ”を直訳した「Le plaisir de conduire」と「El placer de conducir」が採用されます。英語ではもう少し広義で訳された「Sheer Driving Pleasure」となりました。しかし、アメリカとイギリスだけが例外で、この2つの国では「The Ultimate Driving Machine(究極のドライビング・マシン)」というタグラインがBMWの広告に使われています。 

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「Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)」は、BMW独特のブランド・エッセンスを表現するものです。
ヨアヒム・ブリックホイザー
ヨアヒム・ブリックホイザー

BMW Groupコーポレート&ブランド・アイデンティティ責任者

未来への主張

BMWスローガンの物語は、ここで終わりではありません。マーケティング・スローガンの使用は、特に消費者の認知や感覚の変化によっても変わってゆきます。「今日われわれが手にしているすべてのデジタル・フォーマットを通して、私たちの伝えたいことを消費者がすぐに理解できるようにしなければなりません」とブリックホイザーは言います。「私たちは今、コミュニケーションに関してより柔軟なポリシーを持っています。コンテンツ、画像、刷新されたBMWロゴは、これまで通りブランド・イメージを伝える上で不可欠な要素ですが、スローガンの使用に関しては任意となっています。」

「エレクトロモビリティ(➜さらに読む:電気自動車とプラグイン・ハイブリッド・モデルの特徴 )や自動運転車(➜さらに読む:自動運転への挑戦)といったトレンドを考慮し、この有名なキャッチフレーズが使われなくなるという可能性もあるのでしょうか」という問いに対し、「そんなことはまったくありません。」とブリックホイザーは断言します。「Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)」は、BMWブランドの真髄を表現するもので、きわめて力強くポジティブな、未来志向のスローガンです。人がドライビングで得られる歓びは、駆動技術や自動運転かどうかなど関係ありません。歓びとは普遍的なもので、こうした人間的感情が私たちを結びつけています。ですから、これまでと同様に将来においても、このスローガンがブランドの核心であり続けることに変わりはありません」

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BMWのスローガン「駆けぬける歓び」の歴史

BMWのスローガン「Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)」は、ドイツ語の様々なフレーズから長年をかけて変化してきました。1930年代に「pleasure(歓び)」という言葉が初めてBMWの宣伝広告に登場し、それがのちに「Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)」へと進化していきます。3つの単語から成るこのスローガンが正式に採用されたのは、1972年。それ以降BMW車の広告には、いくつかの国を除く世界中でこのスローガンが使われています。

写真:BMWグループ・アーカイブ;記事:フランク・ギーゼ

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