想像してみてください。自分の気分に合うように、BMWのエクステリアを変えられるとしたら。また、その時々の天候にふさわしい色や柄が選べたら。
BMW i5 Flow NOSTOKANAは、こうした願いを実現させるクルマです。E Inkを活用したカラーチェンジ技術がさらなる進化を遂げたことで、BMWはエクステリアのデザインを前例のない方法でカスタマイズできる、新たな世界を切り開きました。これは、テクノロジー、イノベーション、アートの融合によって実現します。この独創的な作品は電子制御のフィルム・セグメントを採用し、E Ink Corporationと共同で開発した、車両表面のカラーチェンジ技術における最新の成果を具現化しています。
BMW アート・カーへのオマージュを革新的な手法で表現
フリーズ・ロサンゼルス・アート・フェアで発表されたこの1台限りのデザイン・カーは、BMWブランドの歴史とグローバルな文化的支援へのオマージュです。1991年、エスター・マラングは12台目のBMWアート・カーであるBMW 525iのデザインを手がけました。
彼女は、その機会を与えられた最初の女性であり、最初のアフリカ人アーティストでした(➜詳細はこちら Wild at Art:BMWアート・カーの歴史)。「数年前、彼女のアートを目にした瞬間に、BMWのボディにダイナミックなカラーチェンジを施すというアイデアが浮かんだのです」と、BMWグループ オープン・イノベーション・リサーチ・エンジニア、ステラ・クラークは振り返ります。
クラークが初めてこのアイデアを提案した資料では、完成形のイメージとして、マラングのアート・カーのインテリア画像が使われました。「今回、マラングと一緒にこのアイデアを実現する中で、彼女の想いが形になっていく様子を見ることができ、本当に感動しました」とクラークは語ります。
マラングはンデベレ絵画のアーティストとして知られており、自身の文化で重要な行事や祝祭を象徴するモチーフを使っています。このアートスタイルにみられる特徴的な色彩と幾何学模様は、BMW i5(➜詳細はこちらBMW i5: ダイナミズムと支援機能)の革新的なフロー・テクノロジーを紹介する上でも最適です。
真のイノベーションは歓びをもたらすことができます。BMW i5 Flow NOSTOKANAが、たくさんの人々に驚きと感動を与えることを願っています。
ボタンひとつで移り変わる色彩
ディスプレイを超えたデジタル体験は、すぐそこまで来ています。さらに、現実とバーチャルの世界の融合も進んでいます。これは2022年に披露された、E Ink採用のBMW iX Flowによって、見事に実証されました(➜詳細はこちら To the Polar circle with the BMW iX)(※リンク先は英語サイトです)。このモデルでは、ボタンを押すだけでエクステリアをブラックからホワイトに変更し、再び戻すこともできます。
カラーチェンジのポイントとなる電気泳動という物理現象は、E Ink Corporationが開発した技術がベースになっており、似たような形式で電子書籍端末にも使われています。
E Inkを使ったBMW iX Flowの表面コーティングには、直径が髪の毛1本分のマイクロカプセルが数百万個含まれています。これらのマイクロカプセルには、それぞれにマイナスに帯電した白色顔料とプラスに帯電した黒色顔料が入っています。選択された設定に応じて、電気の刺激がマイクロカプセルの表面に白または黒の顔料を蓄積させ、車体で表現したい色彩を実現します。
この技術は視覚的な効果に加え、機能的な効果も備えています。例えば、色の変化によって光の反射も変わり、熱吸収にも影響を与えます。つまり、白い表面は黒い表面と比べて、より多くの太陽光を反射します。日差しが強く、外気温が高い場合は、エクステリアを明るいカラーに変更すると、車両および車内の温度を下げることができます。
逆に涼しい気候では、エクステリアを暗めのカラーにすることで、太陽からより多くの熱を吸収しやすくなります。どちらの場合も、より望ましいカラーへ変更できることによって、車両の温度調節にかかる負担は軽減されます。
1,349もの独立したフィルム・セグメント
わずか1年後の2023年には、マルチカラーの導入が初めて実現しました。BMW i Vision Dee(➜詳細はこちら こんにちは、DEEです!私の拠点へようこそ!)に実装された240のE Inkフィルム・セグメントは、それぞれ個別に制御され、最大32色が表示されます。
最新の開発では、さらに多くの色や模様が実現可能になりました。BMW i5 Flow NOSTOKANAには、数多くのフィルム・セグメントが、サイド、ルーフ、ボンネット、トランク、リムへと広がっています。1,349のフィルム・セグメントは個別に制御でき、複雑な装飾の細部まで正確に描き出すことができます。その結果、エスター・マラングのアートにみられる典型的な色彩や模様を、千変万化の構図で表現できるようになったのです。
アート・カーの名前に、NOSTOKANAを加えたのは意図的な選択です。これは、エスター・マラングの長男の名前であり、またンデベレ文化では、長男の名前を母親が受け継ぐという慣習があるため、事実上、彼女自身の名前でもあるからです。
好奇心こそが、原動力。すべてはそこから始まります。
科学と芸術のシンフォニーが生み出す、新たな思考
BMW i5 Flow NOSTOKANAでは、テクノロジーそのものが芸術作品になっています。クラークにとって、これは調和した共生を意味します。「カギとなるテクノロジーを活用して、不思議な力を持つ製品が生まれます。マジックは、いつも疑念や驚きから生まれると信じています。そのトリックの仕組みを問い続けるものなのですから」
クラークにとって不可欠なのは、旺盛な好奇心。彼女は子どものような探究心を持って、このプロジェクトに取り組んでいます。「アートは、限界を探ります。そして押し広げます。アートは、技術的な制約を飛び越えて、インスピレーション、情熱、アイデア、歓びを呼び起こします。テクノロジーを使ってこうした感情を引き起こすのは大変なことです。だからこそ、アートとこうした考え方を融合させれば、新境地の開拓にもつながると考えます」
この道のりの終わりには、例えば毎日洋服を着替えるように、BMWの色を自在に変化させる技術革新が実現しているでしょうか?開発を重ねるごとにフィルム・セグメントの耐久性は高まり、シリーズ生産への可能性も広がります。ただしBMW i5 Flow NOSTOKANAは、当面1台限りのモデルとなります。
著者:マルクス・レーベリン、アート:ルーカス・ルムース、マディタ・オサリバン、アニメーション:E Ink、写真と動画:BMW