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漆黒の怪物:地上で最も黒い黒、 『VANTA BLACK』のBMW。

漆黒の怪物:地上で最も黒い黒、 『VANTA BLACK』のBMW。

記事を読むのに必要な時間:約7分
スポットライトのないワールド・プレミア:BMWは、地上で最も黒い黒『VANTA BLACK』をボディ・カラーに採用した、世界で最初の自動車メーカーとなりました。この究極のブラックはいったい何から作られ、その何が特別なのでしょうか?

2020/4/2

「Beast - 怪物」。ニューBMW X6を手がけるデザイナー、フセイン・アル・アターは、この作品をそう名付けました。まさに言い得て妙です。なぜなら、この世のどんな黒でも、すべてを吸い込むVANTA BLACKに及ぶ黒はないからです。

ベンタブラック – 地上で最も黒い黒

その色は、ほぼすべての光を吸収する。

VANTA BLACKは、実際には顔料や塗料ではなく、カーボン・ナノチューブから構成されるコーティングです。このコーティングは、入射光をほぼ完全に吸収するという性質を持っています。深い黒の背景の前では、ベンタブラックが施された物体はまるで消えているように見えます。これは、コーティングされた物体の形状を人間の目が2次元であると認識し、空間的な奥行きの知覚が失われるためです。

ニューBMW X6のショーカーは、建築および科学分野向けに開発された『VANTA BLACK VBx2』でコーティングされました。VANTA BLACKをベースに生み出されたこのコーティングの反射率は1%ですが(純粋なVANTA BLACKの反射率は0.036%)、「スーパーブラック」であることに変わりはありません。すべての角度でごくわずかな光の反射を伴うにしても、スプレーにより塗布できるという利点からこのコーティングが採用されました。

「VANTA BLACKは、ニューBMW X6の圧倒的なサイズと比類なきフォルムに、より強烈なオーラをまとわせます。」
Ben Jensen

ベン・ジェンセン - 『VANTA BLACK』開発者

BMW X6 Vantablackのために作られた特別なペイント・ブース。

(画像上)VANTA BLACKでの再塗装を待つ、リバーサイド・ブルーのニューBMW X6。塗装しないエレメントとウインドーには、マスクが入念に施される。 (画像下)主人公の登場を待ち望む、ペイント・ブース。

『VANTA BLACK』とは。

『VANTA BLACK』はカーボン・ナノチューブから構成されるコーティングで、光をほとんど反射しません。このブラックは、地上に存在するなかで最も黒いブラックであると考えられています。Surrey NanoSystems社によって生み出され、同社が一切の権利を保有するこの技術は、衛星機器のコーティングなど宇宙事業向けに開発されました。 「Vanta」とは、「Vertically Aligned NanoTube Arrays(垂直に並べられたナノチューブの配列)」の略称です。

BMW X6 VANTA BLACK – 準備

(左上から時計回りに) (1)マスクされたニューBMW X6が、所定の位置へと導かれる。 (2)変身前の最後の姿。 (3)次のレイヤーの塗装を待つ。 (4)Surrey NanoSystems社の社員が、VANTA BLACK用の下地材を満遍なく吹き付ける。

「スーパーブラック」を纏ったBMW X6 Vantablack。かつて、光を反射しない物質でクルマがペイントされたことは一度としてありませんでした。VANTA BLACKの開発を続けるSurrey NanoSystems社との共同作業によって生み出されたこのクルマは、入射光をほぼ完全に吸収するコーティングにより多くの人々の目を文字通り“引きつける”ものとなっています。

「私たちはこれまで、多くのメーカーからのオファーを断り続けてきました。」と、VANTA BLACKの開発者であり、Surrey NanoSystems社の創設者でもあるベン・ジェンセンは語ります。「しかし、唯一ニューBMW X6だけは、我々とのコラボレーションに相応しいクルマだと直感したのです。」

この技術は、もともと先端宇宙事業向けに開発されたものでした(:隕石は如何にしてクルマとなったか)。VANTA BLACKは430℃以上の温度で処理されるため、アルミニウムなどの繊細な材料にも用いることができます。VANTA BLACKでコーティングされた光学望遠鏡では、光を吸収することで、散乱光が影響して観測が困難になる微細な光の星や遠くの銀河を捉えることが可能です。    

そして、ついにこの最先端技術とBMWのコラボレーションが実現しました。ニューBMW X6のデザインでは、照明付キドニー・グリル「アイコニック・グロー」や、4灯式のヘッドライト、特徴的なL字テールライトなど輝きを放つエレメントと、光を吸収するマットで滑らかなVANTA BLACKのボディが、究極的に美しいコントラストを成しています。

ニューBMW X6のデザイナー、フセイン・アル・アターは、これこそがこのプロジェクト最大の特徴であり、同時に圧倒的な魅力でもあると考えています。VANTA BLACKは、デザイナーたちに新たな視点をもたらしました。ショーカーを設計するにあたって、彼らは光の反射や色彩の変化といった要素を気にかけることなく、クルマの純粋なプロポーションについて集中することができたのです。    

BMW X6 Vantablack - 光との隔絶

最終段階:世界で最も黒いブラックを纏ったBMW X6 VANTA BLACK。

「『VANTA BLACK VBx2』は、光の角度や反射といった要素にとらわれず、自動車設計においての純粋かつ本質的なコンセプトを光り輝かせます」
Hussein Al Attar

フセイン・アル・アター - BMWデザイン・ワークス オートモーティブ・デザイン クリエイティブ・ディレクター    

BMW X6 Vantablack - 出現

すべての準備は整った。BMW X6 VANTA BLACK - 漆黒の怪物は、出現の時を今か今かと待っている。

BMW X6 VANTA BLACKを購入することはできますか?

BMW X6 VANTA BLACKは、日常的な利用において現時点ではコーティングの耐久性が確保できないため、特別なワンオフ・モデルであることが運命付けられています。また、この「スーパーブラック」でのペイントが非常に高価であることや、公道での安全性もその理由に挙げられます。

しかし、将来的にこのテクノロジーは、ドライビング・アシストで重要な役割を果たすレーザー・ベース・センサー・システムに採用されることで、自動運転(→関連記事を読む:自動運転への道)におけるあらゆる場面で、多くの人々に恩恵をもたらすことでしょう。

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