誰でも一度は運転中に眠気を感じた経験があることでしょう。しかし、ドライバーは、運転中の疲労がどれほど危険であるかを軽視してはいけません。英国の学術雑誌産業環境医学(リンク先は英語です。) が発表した論文では、居眠り運転は飲酒運転と、ある種同じ影響をもたらすことがオーストラリアとニュージーランドの研究者によって報告されています。それによると、17~19時間眠らずに運転をした人たちは、血中アルコール濃度が0.05パーセント上昇したことが確認されています。この値は、西欧諸国における飲酒運転の法的規制値であり、米国ではほとんどの州の規制値である0.1~0.08パーセントよりもわずかに低いだけです。(日本においては、呼気1Lにつき0.15mg以上、血液1mlにつき0.3mg/血中アルコール濃度0.03%以上が検知されると酒気帯び運転となります。)
また、疲労したドライバーは数秒間だけ瞬間的に眠ってしまう、いわゆるマイクロスリープに陥る危険もあります。もしも約90km/hで走行中に5秒間居眠りすると、その間に車両はおよそ120メートル進むことになり、たった5秒の居眠りでは衝突事故を招く危険性があることがわかります。
安全運転のためのアドバイス:疲労のサインにいち早く気づくこと
マイクロスリープが起こる少し前には、あくびやまばたきが頻繁になったり、まぶたが重くなったり、目がしょぼしょぼするなどの危険信号が発せられることがよくあります。これらの症状が現れたら、何か対策を打つべき時です。
眠気を覚ます効果的な方法や、不意の居眠りを防ぐ方法を知りたくありませんか?ここでは、そのリクエストに答える最適なアドバイスをご紹介します。
運転中に居眠りをしないためのアドバイス:仮眠、休憩、同乗者の協力
- 十分な睡眠:疲労と眠気に対する特効薬は、睡眠しかありません。ましてや長距離のドライブともなれば、出発前の十分な休息は何よりも重要です。もしも大きなストレスを受けた後や前夜よく眠れなかった場合には、無理に運転して出かけないようにしましょう。
- 短い仮眠:長距離ドライブでは、少なくとも4時間に1回は短い仮眠を取るべきです。仮眠のメリットは明らかですが、これらの仮眠は20分以内にする必要があります(米国運輸省 幹線道路交通安全局 NHTSA推奨※リンク先は英語です。)。それ以上の仮眠では身体が深い眠りにつこうとするため、逆効果になってしまうからです。
- 意識レベルの低い時間を避ける:生体リズムを司る体内時計について把握し、意識レベルの低い時間を避けて運転時間や旅程を調整します。一般的には午前2時~午前5時の間、午後1時~3時頃と言われています。渋滞を避けようとして深夜に運転する計画を立てることがありますが、これは居眠り運転の防止には決して良策とは言えません。
- こまめに休憩を取る:長距離ドライブの最も重要なアドバイスのひとつは、定期的に休憩を取ることです。車を停め、リラックスして、車から降ります。散歩をしながら新鮮な空気を吸うことは、手足を伸ばすだけでなく、血流への酸素供給を増やして集中力を高めることにも繋がります。
- 食事を摂る:正しい食事は身体のコンディションに大きく影響します。空腹または満腹の状態で運転をしないようにしましょう。どちらも運転能力を低下させます。ドライブ中には、野菜などの軽食がエネルギー補給になるだけでなく、健康的にも良い選択と言えるでしょう。また、消化の悪い食べ物を摂取するのは避けてください。眠気を誘発することがあります。
- 水分を摂る:長距離ドライブだけに限りませんが、飲み物は十分に摂取する必要があります。できるだけ多くの水(または甘くない飲料)を飲んでください。
- 適度に気分転換をする:長距離ドライブでは、路面だけに集中し過ぎず、適度な気晴らしも必要です。面白いオーディオブックは、単調な運転が続く時などには精神的なリラックスのためにも役立ちます。もっと良いのが、同乗者です。会話でドライバーを楽しませたり、疲れてきた時に気づいてくれたりします。最も理想的なのは、そんな時に同乗者が運転を代わってくれて、2人で目的地に無事に到着することです。
- 薬と健康状態:一部の薬を服用した後の運転にも注意が必要です。眠気や注意力の低下といった副作用がある薬もあり、居眠り運転やマイクロスリープを引き起こす恐れがあります。睡眠薬、向精神薬、鎮痛薬だけでなく、アレルギー薬でさえも影響がでることがあります。薬の副作用が不確かな場合は、医師または薬剤師に相談をしましょう。慢性疲労や睡眠障害などの病状に悩まされている場合にも、同様のことが当てはまります。
居眠り運転:短期的な対処法
- キャンディは、素早く身体にエネルギーを補給してくれます。しかし、その後に血糖値が下がるのも早く、また疲労感が戻ってきてしまいます。あくまでも短期的な解決法であり、長距離ドライブを安全に保つ最善の方法ではありません。
- 栄養ドリンクやコーヒーも同様です。カフェイン等は初期の高揚の後、すぐにまた疲労が戻ってきてしまいます。
- 車内の換気:一時的に窓を開けることにより、体内に酸素が急激に供給されます。これによっておそらく短時間の覚醒がもたらされますが、このトリックもまたすぐに効果が薄れていくため、短期的な解決法のひとつに過ぎません。
- チューインガムは脳内の血流を刺激し、睡眠不足の症状を和らげます。しかしそれも一時的です。長時間におよぶ居眠り運転の解決策ではありません。
- 大音量の音楽も効果は一時的です。その上、疲れている時には周囲への認識力がただでさえ低下しているため、サウンド・システムを大音量で鳴らすことで改善できるものは何もありません。結局のところ、これは安全運転の邪魔をする場合もあります。
運転中に居眠りをしないように役立つ車の機能
BMWのドライビング・アシスト・システムには、注意力が低下しているときに補助をする機能も含まれています。疲労による典型的な兆候には、不注意運転や車線の逸脱などがあり、これらのことが起きないようシステムがサポートします。ステアリング&レーン・コントロール・アシストおよびアクティブ・サイド・コリジョン・プロテクションは、ドライバーが不自然なハンドル操作をしたり、側面からの衝突の危険がある場合に、警告を鳴らしたりします。運転中に疲労と闘っていることが原因でこのようなことが起きた場合には、すぐに休憩を取るべきです。
BMWのAI音声会話システムなどのデジタル機能も、疲労を感じた時にひと役買ってくれます。「Hey BMW、疲れたよ!」と言うだけで、温度、照明、音楽などを調整してドライバーをリフレッシュさせるバイタライズ・プログラムが起動されます。また、数時間運転をし続けている場合には、BMWが休憩を取るように促します。さらに、ベッドでゆっくりと休みたい時には、ナビゲーション・システムがBMWドライバー・サポート・デスクのサポートを得て、最寄りのホテルまでご案内します。
ドライバーが常に考えなければならないのは、安全を最優先するということです。疲れている場合には、迷わずに運転を中断することも必要です。
旅の続きは、一晩ぐっすり眠った後のお愉しみにしましょう。睡眠不足に対処する最善の方法は、とにかく睡眠を取ることです。
イラスト: Vanessa Deussen