まず先に到着したのは、クラシックモデル。この、赤のBMW 8シリーズは完璧なコンディションです。ラグジュアリークラスBMW品質管理部長のニールス・ハーマン氏が満面の笑みと共に降り、彼の車両へと誇らしげに身ぶりしました。「これが、私が所有するBMW 8シリーズ2台のうちの1つです!」30年前、BMW 8シリーズはBMWモデルの中でも燦然と輝く栄誉でした。ハーマン氏が誇らしげにするのは当然です。最高のテクノロジー、デザイン、そしてエアロダイナミクスが、真の逸品を作り出すため入念に融合されたのです。
ハーマン氏の赤いクラシック車の隣へと停車してきたのは、BMW 8シリーズ グラン クーペです。前世紀の技術的センセーションを、革新的な現代の姿へと生まれ変わらせた後継車。フローズン・ブルー・ストーン・メタリックのペイント仕上げに、洗練と壮健を等しく体現したシルエット、そして力強いリヤ。この4ドア・クーペの最高傑作は、実に印象的な外観を備えています。また、BMW 8シリーズ グラン クーペのプロジェクトリーダーを務めるレイナー・ポールマン氏も、パーソナル・アンバサダーとして車と共に登場しました。
Q:私たちは2つの異なる時代に生まれた、ドリームカー2台の前に立っています。ドリームカーの定義とは何でしょうか?
ポールマン:BMW 8シリーズ グラン クーペの開発を始めた際に感じた魔法の瞬間が全てです。この車の本当に特別なところは、そのデザインです。2016年に最初のモデルを最終調整しましたが、その初期段階でさえ、この車のコンセプトは我々を圧倒していました。その次にあげたいのが、当社の最も優秀なエキスパートたちが作り出すインテリアです。素晴らしい調和で、インテリアとエクステリアの完全なる共生を表現していると私は思います。ちょうど約1年前、私は最初の試作モデルに座ってスタートボタンを押しました。それは、まさに魔法の瞬間でした。
Q:1989年のデビュー当時、BMW 8シリーズはドリームカーでしたか?
ハーマン:疑いの余地なく、そうですね。そのワールドプレミアは30年前、フランクフルトで開催されたIAA国際モーターショーで挙行されました。この車がポートフォリオの頂点を象徴することをはっきり伝えるため、BMWはモデル名として8を初めて使用しました。12気筒エンジンは380馬力を超え、それは世界最高の、ラグジュアリークラスのスポーツカーとしてデザインされた車でした。
Q:このクラシックカーが新しいBMW 8シリーズと共通して持っているものはなんでしょうか?
ポールマン:「旧型の」8シリーズと全ての新しいモデルの両方が、独自のデザインを持っています。これらの車は、BMWポートフォリオの中でさえ極めて特別なポジションを占めているのです。両車の主な特徴は、そのダイナミズムを完璧に表現する長いフードです。テクノロジーに関しては、基本的なアプローチは似ています。旧型のBMW 8シリーズはハイテクで、あらゆる分野で当時最新のイノベーションを装備していました。新しいBMW 8シリーズにもこのアプローチを採用し、現在利用可能な最高のテクノロジーの力を利用しています。
ハーマン:例として、リヤ・アクスル・ステアリングを見てみましょう。E31(旧BMW 8シリーズの社内用モデルコード)はこの機構を持つ最初のBMWでした。ホイールが同じ方向へ動くため、スピードが上がってもより高い操作性を可能にしてくれます。当時、BMWは世界最高のリヤ・アクスル・ステアリングを持っていました。新しい8シリーズではこれはオプション機構として利用できます。大きな車両を小さく、より敏捷にすることを可能にしたのはこの機構です。E31で当社は新しいテクノロジーを導入し、そして現行モデルではこのテクノロジーを圧倒的な形で更に成長させ、向上させたのです。
Q:旧型の8シリーズは、クーペバージョンでのみ販売されていました…
ハーマン:はい。試作品のみコンバーチブルが製造されました。そのうちの1台、赤い車両はここ、BMW Group Classicで時々展示されています。M8も、試作品として赤で製造されました。そのエンジンはマクラーレンF1で使用され、そしてフードの下にBMWエンジンを搭載してル・マンの24時間レースを勝ち抜きました。このモデルが持っていた将来性がどれほどのものだったか、教えてくれるストーリーですね。
ポールマン:コンバーチブルを愛用する顧客は数多くいたはずです。そのため、当社ではクーペ、カブリオレ、そしてグラン クーペを揃えました。グラン クーペは、その全てのDNAが100パーセントクーペという、真のスポーツカーです。唯一の違いは、4ドアとリヤに快適なゆとりがあることです。
Q:ポールマンさん、あなたにとって、何が車への情熱のきっかけになりましたか?
ポールマン:私の兄は自動車整備士で、弟の私をよく試運転に連れて行ってくれました。そのワクワクする体験がきっかけです。 Z1が発表され、そしてBMW 8シリーズが登場したその当時、BMWはイノベーションのピークにいたのです。
Q:ハーマンさん、あなたはいかがですか?
ハーマン:私の車への情熱は、叔父から譲り受けたものです。彼は自動車部品メーカーに勤務して、イノベーションを重ねていました。子供の時から、私はカーショーを見に行っていました。叔父がボンネットを開いて、こう言うんです。「ご覧、あれは私が設計したんだ!」最初の8シリーズが登場した時、若者だった私にとってそれはドリームカーでした。ベルリンでコンピューターサイエンスと機械工学を学び、その後にBMWへ入社しました。この車を購入したのは2004年です。以来ずっと、これが私の情熱です。
Q:お2人とも技術者でいらっしゃいます。テクノロジーとデザインはどのように共存するのでしょうか?
ポールマン:いかに洗練されたデザインを技術的に実現させるかということです。「それは不可能だ!」というのは、開発プロセス中に頻繁に耳にされる言葉です。しかし大抵の不可能を可能にしてきました。例えば、贅沢な空間を惜しみなく提供したいという思いと、クーペの低い車体デザインをどう調整するか、という1つの課題について。あらゆる表面積を守ろうと努力し、全ての機構を再設計し、微調整しました。それはミリメートル単位の仕事で、最初から全てやり直しということも何度もあります。2つのリヤ・シートには、快適なサイドサポートを持たせています。十分な上部空間を維持しつつこれを実現するのは、本当に難題でした。目指したのは、完璧であること。そしてその内部に座っても、最高に快適だ、と言えるものであること。リヤ・シートを間近で見てください。そうするとおそらく、これまでに見たことがない形をしたシートだと気づくでしょう。これは最高級の職人技によるステッチのおかげです。私が大変満足している部分です。
Q:グラン クーペにぜひ乗ってほしい人物像は?
ポールマン:自分の決めた道を堂々と生きる、成功者。そして、スポーティで美しい車を愉しみたいし、後列シートの快適性も諦めたくはないという方。スポーティーなドライブに3人連れて行きたいと、いつでも言えるように。
Q:ハーマンさん、あなたは8シリーズ2台の幸せなオーナーです。そしてこちらの車のカセットデッキには、1989年の販売員用教材カセットオリジナル版が入っています。あなたの書籍「BMW 8 Series – Power & Hightech(BMW 8シリーズ - パワー&ハイテク)」も8つの章で限定されて終わっています。8シリーズへのあなたの熱意は、ほんの少しばかり行き過ぎではありませんか?
ハーマン:そんなことは全くありません!それは昔も今も、素晴らしい車です。発表当時、デザインは唯一無二でBMWの中でも本当に目立ちました。その後にやって来たのが、革命的な抵抗係数です。BMW初の、0.3以下を実現しました!そして子供の頃に私が大好きだったものに、エンジンの純粋なパワーがあります。スピードメーターは時速300kmへと上がりました。8シリーズでは、250に限定されていますけれど。
Q:ポールマンさん、グラン クーペに乗り込む時、あなたが特に好んでいる何らかの機能はありますか?
ポールマン:スポーツモードとコンフォートモードのバランスには、常に興奮させられます!街に到着したばかりで静かにゆっくりと運転したい時、私はコンフォートモードを利用します。スイッチを押してすぐ、望む通り完璧にエンジンがカーブし、指標をシフトし、そしてサスペンションが順応するのを感じます。田舎では、スポーツモードを使えばスポーツカーとしての究極の楽しみを引き出せます。私にとって、8シリーズ グラン クーペは敏捷性とラグジュアリー、贅沢の完璧な複合物です。要するに、これこそがドリームカーです!